2010年6月5日土曜日

女の眼でみる民俗学



女性の執筆陣による、女性に関する民族的な問題を取り扱った本です。
炊事や洗濯、出産や死など、女性の一生にどのような出来事があったのか。


特にこと出産ということに関して、女性は明らかに男性よりも大きな負担を強いられているわけです。
そのことの「負担感」というものに対する不公平感のようなものは、やはり以前から根強くあったのかな、と本書を読んでいて思いました。

ただ、それでは女性が一方的に負担を強いられ、虐げられていたのかというとそういうわけでもなさそうです。
一部の風習に残る「男性だけに限定されるもの」(例えば相撲の土俵には女性が上がれないなど)の原因は、女性が劣っているとか不浄である、というよりも「女性のもつ特別な力」を恐れてのことだったのではないか、という指摘もなされています。


また、炊事などを女性が担当していることについても面白い指摘があります。
炊事を任される、ということはその一家の命運を一手に引き受けるに等しい意味合いをもっていたようです。
つまり「炊事を押し付けられる」という感覚よりも「炊事を信頼して任される」という解釈に近い。


現在の我々が持っている死生観とは明らかに異なる世界。
しかし、我々はそういった死生観を捨て去り、また新しい観を育て、受け継ぐこともなく現在の世を生きているわけで。


功利主義が幅をきかす現状にあって、実は大切なのはそういう「命の客観化」のようなものなのかもしれない、などと漠然と感じました。

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