2009年7月28日火曜日

Harvard Business Review 2009年8月号


不況時における経営方針に関する論文を集めた号です。

はっきりいって、前半~中盤にかけては零細法人にとっては敷居が高い内容となっています。
しかし、最後二つの論文は零細法人にこそ気にして頂きたい内容です。


・不況期の上司の心得
上司という部分を社長に読み替えてそのまま利用できます。
見通しを示す、起きている現象を理解する、仕事を調整する、相手に思いやりを示す。
好不況問わず、当り前のことが出来るかどうかによって人材活用は大きな違いが生まれます。


・不況期のキャッシュ・マネジメント
運転資金の管理に関する論文です。
零細法人にとっても役立つ内容がとてもコンパクトにまとめられています。
この一つを精読するだけでも、資金繰りというものに関する新しい知見が得られるのではないでしょうか。

2009年7月24日金曜日

小さな会社のブランド戦略


下で紹介している本の兄弟本です。
基本的に書かれている内容は類似していると考えて頂いて構いません。
二冊併せて読むことで、より内容が補完されるかと思われます。


こと現在のような状況にあって、多くの企業が価格競争に勝ち残ることで生き残ろうとしています。
しかし、その方向の先に待っているのは大手企業のみが生き残る独占・寡占の世界です。
その世界には零細企業が生き残る余地は存在しません。

小さな企業が自分の立ち位置を作り、事業を持続可能なものへとするためには絶対にブランド戦略が必要になってきます。
まず問われているのは社長さん個人としての魅力です。
それをどのように発揮できるのかによって、小さな会社の運命は大きく変わります。

皆さんも「もてる人」と「もてない人」なら「もてる人」になりたいのではないでしょうか?
是非もててもてて困っちゃうような社長さんになって、もててもてて困っちゃうような企業を経営してみて下さい。

だれかに話したくなる小さな会社


私自身が顧問先などに繰り返しお話していることの一つに

「これからは小さな会社ほどブランドを作らなければならない」

というものがあります。
理由はいくつかありますが、ごく簡単にまとめるならば「良い意味で目立たないと、あまりにも競争相手が多すぎるので商売にならない」というものがあります。

競争相手は同業他社だけとは限りません。
最近の若年層は携帯電話に多くの時間を奪われていると聞きます。
それまで洋服にお金をかけていた世代が携帯電話をいじることで満足を得ているのだとすれば、アパレルメーカーにとって競合相手は携帯電話の会社ということになります。
これまでは競争相手と見なされなかったような会社が突然自社の市場を食い荒らすような時代です。

その状態にあって、ブランドを形成することができる企業は事業の展開方法が全く異なります。
ブランド企業には人やお金、チャンスが自然と寄ってくるものです。
あえてこちらから追いかけるまでもなく、勝手に集まってくるのです。
ブランド企業は自分から営業をかけることなく、ファンに支えられながら事業を発展させていきます。


本書はその「ブランドの引力」をどのように作るのか、ということに関して書いてある本です。
ブランドという概念はこれからの事業展開においてとてつもなく大切な考え方になります。

2009年7月18日土曜日

企画脳


私自身が現在追い求めていることに「楽しさ」「面白さ」というものがあります。
このご時世にあって、多くの人が楽しんだり面白いと思ったりすることを忘れている、あるいはそれが罪だとすら思っているのではないかと感じているからです。

しかし、成果を生み出している社長さんの多くが趣味を持っていることからも分かるのですが、何かを楽しんでいない人間に良い仕事は生み出せません。
また「自分を変える」「今持っているものを捨てる」といった行為に対して後ろ向きな考え方しか持てない人が成果を出すことはほとんどありません。
成功する社長は現状を変える、捨てるということについて冷静に、且つ前向きに捕えています。
それらの行為を楽しみ、面白いと思える人こそが大成するのです。


こと現在に至り、必要な能力は「仕組みを作ること」であると考えています。
もう少し言い換えるならば「面白さを仕組む、企画する」とでもなりましょうか。
良い仕事をするだけでは全く足りず、いかにエンタテイナーとして振る舞えるのかが問われているのではないかと。

本書は稀代のヒットメーカー秋元康さんが書かれた企画に関する本です。
非常に平易な文体で経営者、サラリーマン、自営業者等々、全ての人が押さえておくべき事項がつらつらと書かれています。


大勢から受け入れられることを求めないがゆえに、結局は大勢から受け入れられている。
氏のマスコミ活動だけでは分からないお話が満載です。

ものつくり敗戦 「匠の呪縛」が日本を衰退させる


日本は製造業の国であると言われています。
また多くの中小零細企業が「自社の技術の高さ」というものを誇りにしています。
確かに今から数十年前、「職人の技を持つ人間」によって日本は大きな繁栄を手にしていました。

そして、そういった技術の高さは「職人技」「匠の技術」といった言葉で表現され、それらは形式知や理論といったものとは真反対にある「暗黙知」「体験・経験主義」と理解されています。
本書は、その方向から産業を成立させることの限界を指摘しています。


「誰がやっても優れた成果が出せる仕組み」というものについてどう思われるでしょうか?
私は非常に良いことだと思うのですが、こと日本社会においてはこのような仕組みが好まれることはあまりありません。
「熟練した技を使ってその人にしかできない仕事を追求する」といった姿勢こそが「良い仕事」というように理解されているようです。
しかし、このようなものの見方は基本的に製造者側の理屈です。
そこには利用者側やシステム全体からの観点が全く欠落しています。

日本の「匠」や「職人芸」は見えるものにあまりにも多くの注意を払いすぎています。
しかし、現在求められているのは「全体としての最適解」や「仕組み」といった見えないものです。
これからの産業においては「見えないものを見ようとする努力」こそが求められています。
そういった姿勢が足りないからこそ日本ではソフトウェアやシステム分野において大きな成果を出すことができないでいるのです。

本書の中においても触れられていますが、本来日本では「見えないものを見る」ことについて多くの研究がなされてきました。
「わびとさび」「空」「観は強し見は弱し」
これらはすべて目に見えないものを感じようとする言葉です。
そして「目に見えないもの」は合理からだけでは構築することができません。
そこにこそ「体験・経験・矛盾」といった非合理的なものが含まれています。

日本企業は「合理を追求すべき分野」「非合理を追求すべき分野」を見直す必要があります。


良書です。
企業人、研究者、経営者問わず、ぜひ読んで頂きたい一冊です。

2009年7月14日火曜日

ウェブはバカと暇人のもの


Web2.0などという言葉が流行して大分経ちます。
インターネットで大儲け、クラウドコンピューティングで革新的なシステムが、などというお話がコンピュータ関係の本に留まらず、一般雑誌などにおいても特集されるようになってきました。

では現実にIT絡みの技術が物凄く大きな市場を形成することに成功しているのかと問われれば、私は「否」であると考えています。
少なくとも「ウェブでウハウハ」なんていうケースはそうそうありはしないかと。


所謂一般人がブログのような表現方法を手に入れたことは大きな意味があると考えています。
しかし、それが即産業化というように把握するのは、少々短絡的に過ぎます。
書かれているコンテンツの品質や伝達方法のレベルなど、やはりプロフェッショナルがテレビなどのメディアを使って大々的にやっているものの方が圧倒的に完成度が高いのではないかと。

本書はネットにまつわる色々な「良いお話」を単なる幻想だと切って捨てています。
確かに、最近でも「それ本当かよ!」と思わず突っ込みたくなるようなIT関係のお話が溢れ返っています。
少し前に紹介した「僕が2ちゃんねるを捨てた理由」と共に、ウェブに関する現状分析をするための書籍としては役に立つかと思います。

ただ、本書のスタンスは少々極端に過ぎる面もあります。
この本で敢えて取り上げていない「頭の良い人々」も確実に存在するわけですし、そもそもテレビというメディアとネットというツールを一冊の本で比較する必要があるのかな~というのが個人的な感想です。
そもそもが求められている機能が違う、ということを忘れないでいることが大切かと。

2009年7月9日木曜日

六〇〇万人の女性に支持される「クックパッド」というビジネス


ネットを絡めた事業は案外と成立しにくいことが分かっています。
無料で楽しんだり調べたりすることが出来るサイトがこれだけある状態において、一定数のアクセスを集める事がどれだけ難しいのかはHPやブログを開設したことがある人ならばすぐに分かって頂けるのではないでしょうか。
例えば広告を出すことで収益を獲得するようなビジネスモデルにおいても、アクセスがそれなりに集まっているだとか余程特殊なノウハウでも持っていない限りはそれほど大きな広告出稿料を獲得することは出来ません。


そんな中で本書が取り上げている「クックパッド」というサイトは異彩を放っています。
サイトの機能としては非常に限られています。

・料理のレシピを投稿する
・料理のレシピを調べる

基本的にはこの二つだけが出来るようになっています。
しかしながら、その検索性能や投稿の簡便性、果ては広告出稿者との提携が上手いことなどを理由に六〇〇万人もの女性がユーザーとして存在するそうです。


最近思うのですが、消費不況の原因は所謂「男社会」が弊害になっているのではないかと。
男の目線から考えられたものよりも、女性のために作られたものの方が消費活性効果は圧倒的に高いのではないかという気がしてなりません。
その意味においても、このサイトの目指している方向は非常に面白い研究対象となるのではないでしょうか。

2009年7月6日月曜日

多読術


あなたにとって「本を読む」という行為はどんなものですか?
一言では言い表せないかもしれません。
そのあり方も十人十色でしょう。


本書は「本を読むということ」ということについて語られている本です。
その内容は時に難解ですが、敬遠するようなものではありません。
なぜなら本書は「こうあるべきだ」ではなく「それで良い」というスタンスを取っているからです。
読書とは格調高いものではなく、親しみやすいものだと冒頭で説いています。

更に繰り返されるのは「読み手と書き手の相互作用」というお話です。
読書とは一方的な行為ではなく、読んでいる人間と書いている人間間の相互通行的な行為であると指摘しています。


読み手である自分をどのように位置づけるのか、「読書という行為そのもの」も意外と楽しいのかもしれません。

2009年7月2日木曜日

僕が2ちゃんねるを捨てた理由


世界最大級の掲示板サイトである2ちゃんねるの元管理人ひろゆき氏が書かれた本です。
と言いながら、本書は別に2ちゃんねるについて書かれた本ではありません。
氏の考えているテクノロジーとマーケティングの関係性だとか、市場といったものに関する考察をまとめた本となっています。


如何に働かないで済むようにするか、ということを真剣に考えているひろゆき氏ですが、その思考方法は徹底して論理的です。
インターネットをメディアではなくツールと考えていたり、高い技術が市場を形成するとは限らないという現実を分析したりと、言われてみると「あ~確かにそうかも」と思えるような話が多数出てきます。


本書の中で私がもっとも私が共感できるのは「おもしろいと思うこと」の重要性です。
人間が感じるおもしろさの本質とは何なのか。
どうすればそれを新鮮に、且つ懐かしく感じてもらえるのか。
多くの事業において、この点が問われているような気がします。