2009年10月30日金曜日

図解雑学 老子



孔子と並び称される賢人として挙げられる老子の思想に関する入門書です。
孔子があくまで「社会性」や「文明」というものを重視したのに対し、老子は「内面性」や「文明の否定」といった側面を持っています。


現代社会においては、およそ受け入れがたい言葉も多く載せられています。
「民は愚かなままにしておいた方が為政者は統治がしやすい」などの言葉は、例えそれが真実なのだとしても我々には到底許容できる考え方ではないのではないかと思います。

また老子は知識と言うものの存在も肯定的に捕えていません。
孔子と老子が会談した際、老子は「あなたが勉強していることなど全て辞めてしまえばよい」と孔子に対して諭したと言われています。
(ただし、これはおそらく架空のお話であろうと言われているようです)


しかしながら、その内面を深く問う思想には学ぶべきところも非常に多くあります。
「足るを知る」などはその最たる例です。
無制限な欲望が原因で身を持ち崩すことはいつの時代にも存在していました。

根源である「道」というものに即して素朴に生きることの重要性を説いた老子の思想は、とかく欲望に振り回されがちな我々にとっても学ぶべきところが多くあるように思えます。

「三国志」軍師34選



中国の有名な伝記「三国志」及びそこから派生した「三国志演義」においては、勇猛果敢な将軍や智謀に優れた知略家が戦場で華々しい活躍をしていたと語られています。

しかし、本書の著者である渡邊義浩氏によれば、実際には三国時代において最も強い力を誇っていたのは「名士」と呼ばれる存在であったと指摘しています。
名士はその名声と情報網、分析力などを駆使し、それぞれが重視する儒教的主観を実現するために君主と手を結ぶようになりました。
君主側も名士が持つ名声や情報網を当てにし、「軍師」という役職に彼らをつかせます。
「師」というくらいですから、君主にとって各名士は「教えを請うべき師匠的存在」であったといえます。


名士に最も求められたのは、戦場における知略ではなくより大きなレベルでの「戦略的思考」でした。
諸葛亮がその存在意義を認められたのも、戦場における戦術的要素ではなく、俗に「天下三分の計」と呼ばれる大きなレベルでの戦略論を語ったことにあるとされます。
「三国志」「三国志演義」においてはあまり評価が高くない人物も、実際には名士として非常に有能であったことも多いようです。

信用の大きさや独自の情報網が成果につながるという意味では、現代の経営においても非常に近しい部分があるかと思われます。
一つの歴史読み物として、また戦略論のテキストとして読み応えのある一冊です。

2009年10月29日木曜日

一瞬で相手を落とす!コールドリーディング入門



最近ではすっかりとメジャーになった「コールドリーディング」に関する入門書です。
コールドリーディングとは占い師や手品師などが商売用に使っている会話術のようなものです。

例えば「誰にでも当てはまる内容の話」を適切な順番で提示することで、聞いている相手が勝手に自分から語りだすようなことを狙っていったりします。
「あなたは基本的には社交的なのですが、自分の内側にこもりたくなることがたまにありますね」みたいな内容の文章は、読み様によってどんな人にでも該当します。
こういった文章をいくつかつなげることで、相手から信用を得たりすることが期待されます。


これだけ聞くと何だか詐欺っぽいお話なのですが、結構まじめな「対人間学」のようにも思えます。
本書の最後の章では「相手に対して興味を持ち、理解しようとすることの大切さ」を説いています。
この心持ちがあるかないかが、良い人間関係を築けるかどうかの分水嶺とも言えるでしょう。

悪用を志すのでなければ「相手が気持よく話せるようになる技術」と理解できます。
表面的に使いすぎると如何にも軽薄な人間になってしまいそうですが。

2009年10月28日水曜日

よみものmarisol



ここ最近、普段の自分が読まない本に挑戦しています。
で、その中でも最右翼のものがコレかと。

いわゆるアラフォーと呼ばれる独身女性向けの内容です。
「婚活」「仕事」「出産」「お金」「老後」等々、女性が一人で生きていくことに対する考え方が色々と出てきます。

え~正直に申しますと、私とは全く異なる考え方が存在するんだな…という部分が多いです。
正直「なんだその上から目線は!」というような文言も多数(特に一般女性の声が…)。
でもこういうことを言うと「古い考え方だ」とか言われちゃうんですかね…。


ただ、圧倒的に一つ納得のできるお話がありました。
とある識者さんのお言葉。
「大人になってから重要なのは、友達を作る力」
これには一切の曇りなく賛同できます。
独り身だろうが既婚者だろうが、子供がいようがいまいが、大人になった後に友達を作るのって結構難しいと思うのです。
この力が発揮できると、実は色々なことが出来るようになる気がします。

図解雑学 農業



「図解雑学」シリーズが結構好きです。
何か興味が出た分野について知りたいと思った場合に、簡単に概略を知ることができるのでその分野の入り口を知るに当たって非常にお世話になっています。

最近、一次産業に興味があります。
農業がちょっとしたブームになっていますが、昨今の食糧に関する事情などを考えても食料というものについて色々と考えておくべきなのではないかと思っています。
特に私の職業柄「なぜ一次産業が産業として成立しない状況になってしまったのか」が最大の関心事です。
例えば農業従事者が「適度な収益を得て農業単独で生計が成り立つような状態」を成立させるためにはどのような経営努力が必要なのか、といったことについてここ最近考え続けています。


本書を読むと、農業が如何に効率性を上げ続けてきたのか、そして日本農家の抱える根本的な問題などが見えてきます。

2009年10月26日月曜日

哲学的な何か、あと科学とか



「この世の中にいるのは実は自分だけで、周囲にいるのは皆人間ではない何かなのではないか?」なんて疑問を持ったこと、これまでの人生の中でなかったでしょうか?
子供の時、私はよくトイレに入っているときにこんなことを考えていました。
トイレというたった一人っきりの空間において、ふとそんな考えにとらわれてしまうとしてもそんなに不思議なことではないような気がします。

哲学というのは例えばそんな「意識」というものを研究するものです。
「脳が人体の中心的なパーツである」という生物学的なアプローチからのみでは、上記の問題は解決しません。
(ちなみに、最近では「脳が人体の中心的なパーツである」とは言い切れないみたいですが)


本書はこういった「人間の意識」の問題に「量子力学」という科学の問題を絡めて話が進んでいきます。
量子力学は現代のテクノロジーの根幹をなしている非常に重要な考え方なのですが、これまた非常に難解なものでして…。
「観測」という行為がどのような意味を持つのか、という非常に深い問題が取り扱われます。
観測するということは、つまり意識が絡んでくるのですが…続きは是非本書でご確認下さい。

2009年10月25日日曜日

哲学的な何か、あと数学とか



実は前著「哲学的な何か、あと科学とか」も読んでいるのですが、まずはこちらをご紹介。

「数学=無機質な記号の羅列」というイメージを覆す一冊。
私自身は決して数学が得意なわけではないのですが、数学史のようなものには非常に興味があったりします。
以前ご紹介したポアンカレ予想だとか、リーマン予想の話などを聞いていると結構楽しめるクチです。

本書は「フェルマーの最終定理」が如何に証明されたのかについて、その歴史を語っています。
そこに存在するのは非常に人間臭く、目の前にある「そのもの」に真摯に向き合おうとするひたむきな人生そのものです。

一つの歴史読み物としてお勧め致します。

2009年10月24日土曜日

食卓からマグロが消える日



魚が好きです。
ご多分にもれず、マグロが好きです。
お寿司屋さんでは大体最後の方でマグロを食べます。

そんなマグロが資源として枯渇しつつある、なんて話は数年前から出ていました。
で、一つその手のことが書いてある本を読んでみようと思いまして買ってみました。


本の内容としては、マグロがヤバイというよりも「日本の養殖技術はすごい」ということに比重が置かれています。
日本の養殖魚が味や鮮度、食べ時まで適切にコントロールでき、場合によっては天然魚以上に安全性も高いことがあるということが書かれています。


この本の内容だけを鵜呑みにするつもりもありませんが、確かに農産物の品種改良の歴史などを考えてみると、魚を「食品」と捉えれば、人間側からより能動的に管理を進めようとするのも至って自然なことなのかもしれません。

とりあえず読んでいて、おいしい刺身が食べたくなりました。

この世でいちばん大事な「カネ」の話



漫画化西原理恵子さんが書かれた「カネ」に関する本です。
ギャンブルから投資、自分で金を稼ぐということと働くということなど、色々なことについて突っ込んだ発言がまとめられています。

私自身が資金繰りに関する書籍を書いた身ではありますが、本書は非常に立派な資金繰りに関する書籍であると感じました。
起業というものや経営というもの関して、非常に軽く考えている方も多い昨今ではありますが、お金というものに関しては是非ともこれくらいの真剣さをもって向き合っていきたいものだな、と。

私自身、本を読んだだけで理解できた気になっている事項が多いような気もして反省です。


「貧乏人の子供は貧乏人になる」
「金は人間関係」

これらは私も事実だと思います。
だからこそ金に対して、真剣に向き合う必要があるかと。

「買う気」の法則



マーケティングの4Pと呼ばれる要素はご存知でしょうか?
プロダクト・プライス・プレイス・プロモーションの四つを組み合わせることがマーケティングには必要だよ、という半ば古典とすら言われつつあるマーケティング学の基礎となっているものです。

プロダクト(商品やサービス)の品質が高いだけで売れるわけでもなく、プライス(価額)が安いからといって売れるというわけでもありません。
しかしてプレイス(売る場所)を変えさえすればどうにかなるわけでもありませんし、プロモーション(広告や広報)を積極的にやればそれで結果が出るわけでもありません。
この四要素が噛み合っていることが市場にその商品が残ることができる前提となってきます。


本書はプロモーション、特に広告というものについて日本の現状把握とその問題点、そして取り組むべき課題について取り上げています。
特に「どんな商品を売り込みたいのか」によって取り組むべき課題は異なっている、という部分などは多くの中小零細企業や個人事業者にとっても参考になる部分が多いかと思います。

現状、本書で言うところの事業主と呼ばれる人々は、こと広告というものに対して「過剰なる期待」を頂き過ぎなのかもしれません。
まず自分の身を律すること、後に広告の活用方法を考えること。
当たり前のことが案外とおざなりになっているのかもしれません。


中盤部に書かれている「マスコミの自縛と自爆」については、よくぞ書いてくれたという感じでしょうか。

2009年10月23日金曜日

マミちゃん(仮名)ばかりが、なぜモテる?



漫画化柴門ふみさんが書かれた「女が嫌いな女」を分析した本…のはずが、なぜか「日本人男性が如何に幼稚か」というお話に。

「雰囲気美人」に関するお話などは、非常に参考になります。
「美人薄命」だとか「美女は三日で飽きる」なんて言葉も世の中には存在しますが、「雰囲気美人」はその雰囲気を継続させる仕組みさえ維持できれば、成果は出し続けることができるのかもしれません。


正直「女の都合で勝手に分析するなや!!」と反発を覚える部分もありますが…。
ただ、自分のことは自分で見えないもの、結構痛いところをつかれてるよな~などと恥じ入る次第です。
「男が男を見る目」については非常に納得。

幼稚な男とそんな幼稚な男にいれあげる女の世の中、だからこそ世界は面白い。
結局人間って基本的にはどこまでいっても社会性の生き物なんだなぁ…とかってに結論づけています。

あえてラベルを「マーケティング」にしたのは人間間の関係性ということに注目して。
マーケティングとは究極的には関係性の生成と維持、成長促進です。

「論語」の話



論語について、ラジオで一ヶ月間放送された内容を一冊の本にまとめたものです。
それまでの論語に関する研究から、話者の独自の視点まで多くの解釈が取り込まれています。
「論語=難しくて分からないもの」という固定観念を払ってくれる、非常に面白い本です。

切り口も中々に面白いです。
孔子の音楽観や女性観など、通常の書籍では取り上げられないような切り口でその人物像が語られていきます。
人間としての孔子がどういった人物だったのか、想像力を刺激される内容です。


話者は「人間の可能性と限定を認識し、どのように生きていくのか」ということが論語の結論ではないか、とまとめています。
とかく「何かが悪い」「環境が悪い」「他人が悪い」と問題を外部に求めがちな我々ですが、結局は自分自身がどのように行動するのかが問われているということなのかと。

2009年10月8日木曜日

小説家の経営術


私はブログなどで常に「想像力を働かせること」の重要性を説いています。
というのも、想像力がない状態で物事を進めていても、結果は出せないからです。
「明確に想像できることは実現できる」ということを常に周囲に対して、そして自分自身に対しても言い続けているのです。

想像を働かせ、物語を作り上げ、自主性をもって行動を決める。
これらは非常に簡単であり、かつ、非常に難しい行為でもあります。


本書は小説家であり、同時に経営者でもある著者が小説と経営に関する話を絡めて進行していきます。
「読者を引き込む小説の書き方」から見えてくる「利害関係者を幸せにする企業経営の方法」について、非常に分かりやすく表現されています。

「何となく日常がつまらない」と思われているような方にとっては、中々に面白い内容かと思います。
自分の人生をより楽しむためのヒントが色々と詰まっているかと。