2009年10月30日金曜日

「三国志」軍師34選



中国の有名な伝記「三国志」及びそこから派生した「三国志演義」においては、勇猛果敢な将軍や智謀に優れた知略家が戦場で華々しい活躍をしていたと語られています。

しかし、本書の著者である渡邊義浩氏によれば、実際には三国時代において最も強い力を誇っていたのは「名士」と呼ばれる存在であったと指摘しています。
名士はその名声と情報網、分析力などを駆使し、それぞれが重視する儒教的主観を実現するために君主と手を結ぶようになりました。
君主側も名士が持つ名声や情報網を当てにし、「軍師」という役職に彼らをつかせます。
「師」というくらいですから、君主にとって各名士は「教えを請うべき師匠的存在」であったといえます。


名士に最も求められたのは、戦場における知略ではなくより大きなレベルでの「戦略的思考」でした。
諸葛亮がその存在意義を認められたのも、戦場における戦術的要素ではなく、俗に「天下三分の計」と呼ばれる大きなレベルでの戦略論を語ったことにあるとされます。
「三国志」「三国志演義」においてはあまり評価が高くない人物も、実際には名士として非常に有能であったことも多いようです。

信用の大きさや独自の情報網が成果につながるという意味では、現代の経営においても非常に近しい部分があるかと思われます。
一つの歴史読み物として、また戦略論のテキストとして読み応えのある一冊です。

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