2011年1月24日月曜日

心が楽になるホ・オポノポノの教え



ハワイの民間信仰であるホ・オポノポノというものがあります。
神聖なる存在ディヴィニティからインスピレーションを受けて行動をすることで物事が上手くいく、という行動原理です。

とかく人間は「考える事」で詰まってしまいがちです。
ハワイの言葉で「ク・カイ・パ」というものがあるそうです。
考えすぎて心が詰まっている状態を意味するのだとか。
昨今のストレスが強まっている社会にあって、心の便秘を起こしている人は相当多いでしょう。

本来のホ・オポノポノは集団でやるものらしいですが、本書ではそれを一人で簡単にやる方法が紹介されています。
やり方は至って簡単で、何かあるごとに

「ありがとう、愛しています、ごめんなさい、許してください」

この4つの言葉を唱えるだけです。
順不同、言いたいものだけを言えば良い、実際には口に出さず心のなかでつぶやくもよし、しかも感情を込めず、機械的につぶやくだけで大丈夫というお手軽さ。


科学的根拠を求められれば返答をすることはできないお話です。
しかし「有用な技術」であるからこそ民間信仰というものは続いてきたわけです。
論理が不明瞭であろうとも、役に立つのであれば使えば良いのだし、少なくとも損はしないのではないかと。

本書を読んでいて思い出しましたが、人間は「怒ること」に対して中毒性を持ちやすいらしいです。
なにかのニュースを読むにつれ「けしからん」と怒っているのもその習性なのだとか。
当然、心身には良い影響を与えません。
「良い感じに生きること」を目指されている方には、中々使える技術なのではないかと。

倍音 音・ことば・身体の文化誌



以前ご紹介した尺八の呼吸法「密息」に関する本を書かれていた中村明一さんの本です。
これまで音楽において脇役に置かれていた「倍音」を主役に持ってくることで、通説とは異なる歴史、音楽、身体の観点をひらこうという一冊です。

日本の国土や日本語の分析を通じ、なぜ日本において倍音の豊富な音楽が産まれたのかが指摘されていきます。
倍音を通じて人と人とのつながりなどが考察されていき、日本の伝統音楽に親しんでいくことの重要性について提言がなされます。

音のもつ多彩な力について再認識ができます。
みんなが知っているあの芸能人の声と発言内容の組み合わせなど、言われてみると「あ~」と納得出来ることが沢山出てきます。


ちょっと「和物ばんざい!」な思想が強すぎるので受け付けにくいところもあるな~とは思います。
が、西洋系の器楽、声楽などにおいて「倍音構造の取り込み」が行われてきている現状を考えると、確かに「和物」が先行している部分もあります。
良いところを上手く併せていくことで、先へ進めることができれば素晴らしいのではないかと。
ご自分に必要な部分だけでも取り込んで頂ければ。
一歩先に進めるのに役立つ一冊です。

疲れない体をつくる「和」の身体作法



能の世界では80歳、90歳で現役ということも珍しくないそうです。
むしろ高齢を迎えたからこそより美しく舞うことができるようになるそうです。

それを可能にする身体意識として「からだではなく身」「芯、コア」などが挙げられます。
最近の言葉を使うならば深層筋というものが有名でしょうか。
能においては外側の筋肉ではなくこの内側の筋肉を多用します。

内側の筋肉を上手に使えるようになると、呼吸が深く確かなものとなり、判断力などにも大きな影響を与えます。
また胴体部(背・腹)を上手に使えるようになることで疲れにくく、高パフォーマンスな身体を保つことが出来るようになります。

改めて「健康」という言葉は思ったよりも意味が深いことを思い知らされます。
単に病気をしないだけではなく身体そのもののパフォーマンスを向上させていくようにしたいものです。

2011年1月18日火曜日

選択の科学



選択肢がある状態とない状態を比較して、人にはどれだけの影響が出てくるのか?
この点について様々な側面から考察をしている本です。

かの有名な「ジャムの試食」実験をやったのはこの人だったのですね。
6種類のジャムと24種類のジャムで試食をしたとき、試食をするのは24種類のジャムを用意した時だったが、実際に購入率が高かったのは6種類のジャムを用意したときだったというアレです。

本書の場合、基本的に「選択できることは良いことだ」ということを前提にしています。
ただし面白いのは「ではすべてを選択できることが良いことなのか」という反対からの目線についても考察されているのが中々に面白いです。
選択肢が多すぎると満足感が下がる。
辛い選択については他人にやってもらった方が楽なこともある。(快復の見込みがない人間に対する治療の停止など)


私が持つ一つの懸念として、人が持つこのような傾向について「科学的に明らかにされていくこと」が一概に良いことだとは考えていない、ということがあります。
これらを理屈として明確にしてしまうことが、結局は人間をより「不幸な状態」にすることがあり得るからです。
そういった辺りの微妙なところを含みおいた上で読むと、実践的に活用できる部分も多い本なのではないかと感じました。

芸能論などとも絡む部分があり、色々な分野に繋げられそうな一冊です。

風姿花伝



世阿弥が書いた能芸論の書として有名な一冊です。
本来は門外不出の秘伝書なわけですから、そこのところを前提においた上で読み進めることが肝要かな、と思います。


年齢別の稽古方法や取り組む役ごとに注意すべき点など、非常に具体的なお話が書かれています。
また「観客を意識すること」についても触れられており、近代経営的な匂いが結構する部分も多々あるように思われます。
そこに加えて「時運」の必要性や好不調の波、稽古の重要性など日常的、一般的な部分にも触れられています。

面白いと思ったのは「本当の花が咲くのは34,5歳くらい」というところでしょうか。
それまでに咲く花は若さ故の季節限定ものだよ、ということ。
当時の35歳といえば、かなりの高齢者ではないかと思います。
現在でも能の演者には80歳、90歳が珍しくないようです。
以前にも能に関する身体技法について取り上げた本を読んだことがありますが、能を通じて身体が活性化されるのでしょうか。

案外と厳しいのは「この年までに花が咲かないと、もう無理だよね」と見限っていること。
最近では「◯◯歳までにやっておきたいこと」的な本も多いですが、一面の事実ではあるのかと思います。
ただ「何歳になっても上達はする」というのもまた事実ですので、自分を磨くことは続けなければなりません。

あとは「皆でシュアする部分」と「秘する部分」についてどう考えるか。
自己の強み、というものを何でもあけっぴろげにするのも事業的には微妙ですが、実はシェアすることによって広がっていく世界(もちろん事業も含む)が間違いなく存在します。

2011年1月9日日曜日

社会的共通資本



そもそも経済学の役割とは「豊かで公正な社会の構築」にあったのではないかと思います。
しかし、現在の社会情勢は「自分が如何に多くのものを手にするか」ということばかりが話題になるようになりました。
ここのところ繰り返し指摘している「所有感の充足」が第一のものさしになっています。

自由主義、新自由主義といった「小さな政府で市場に任せるべき」という傾向が強まり続けた過去10~20年を経て、現在の我々が「良い雰囲気」を感じてるかというと、到底そうとは言えないのではないかと思います。
どちらかといえば日に日に強まっていく閉塞感の中で、誰しもがどことなく世間に対して不満をいだいているのではないかと。

本書は「社会的共通資本」という思想のもとに、医療や介護、農業や教育などの各分野について「現在とは異なる公正、公平な社会の構築方法」について考察しています。
経済というものさしを使う場合でも「金銭的な経済」のみでなく、社会的な意義や体験といった非金銭的な価値についても比較をしています。

とかく「金で測れないものにこだわることは非合理だ」と言われがちな昨今ですが、実際には「ものさしを一つに絞ってしまうことがどれほど怖いか」ということを露呈しているのではないかと思います。
個人的には農業分野における規模の問題や、教育におけるインネイト(先天的)なものに関するお話が非常に興味深かったです。


繰り返し取り上げている「所与的感覚」というものともつながる部分があるお話です。

2011年1月7日金曜日

マネジメント信仰が会社を滅ぼす



マネジメント話が花盛りの昨今にあって、色々な手法が大手企業などでは取り入れられるようになったようです。
しかし、実際には日本企業の成績は上向いているように感じられません。

その原因として「意志の不足」を取り上げているのが本書です。
「ビジネス=意志」「マネジメント=管理」という区分けをし、現在の日本に必要なのは「管理」ではなく「意志」の方だと繰り返し指摘しています。

正直、この区分けにちょっと意図的な部分を感じたり(実際にはマネジメントの中でも意志の力は繰り返し取り上げられている)、また取り上げている事例が非常に極端な例が多いため、素直に首肯することができない部分もあります。
ただ、事業の推進力の重要性について改めて指摘しているという点については納得です。


もう一点、本書では「意志の力」を個人主義的なものとして取り上げています。
私にはこの点がちょっと不満だったりします。
ちょうど本書を読みながら、並行して「個人主義と集団主義」のことを取り上げている本を読んでいるのですが、集団において発生する意志の力というものは存在します。
おそらく本書は「最初の発信源として個人が意志の力を示すこと」を重要性を取り上げているのでしょうが、取り上げている事例をみると「どこまでいっても個人主義」というお話の成功例ばかりが続いています。
実際には「個人が発信した意志の力が集団の意志にまで昇華されより大きな動きとなる」ということが必要なのではないでしょうか。


どちらかというと本書の中でやや批判的に取り上げられている「もしドラ」的状況(ビジネスではなく、趣味などの世界)においてこそ、まず本書の内容を試すのが良いのではないか、という気がします。
(実際、本書内でも趣味などで挑戦することの重要性は取り上げられています)

私自身でいえば、趣味でやっているヴォーカルグループのリーダーとして心がけていることは「これがやりたい」ということをなるべく分かりやすくメンバーや関係者に伝えることです。
その中から共有されたものがグループとしての成果につながっていきます。
こういうところをきちんと体験していくことが結局は事業においても一つの武器になるというのはその通りではないかと思います。

2011年1月2日日曜日

<気づき>の呼吸法



腹式呼吸、言い換えるなら横隔膜呼吸についてとても分かりやすくまとめられている本です。
服装やスタイルに対する観念や社会的ストレスなどから、現代人が如何に呼吸において無理をしてしまい効率的な呼吸が阻害されているのかなど、問題提起と解決方法が提示されている分かりやすい一冊です。

呼吸法は人間の身体能力、思考能力に対して確実に影響を及ぼします。
浅く速い呼吸を繰り返し、ストレスから息を止める状態が続くような日常を過ごしていると、身体能力は低下しそれに伴い判断能力も衰えていくでしょう。
これは精神論的な問題ではなく、浅い呼吸では酸素を効率的に取り込むことはできないというもっとシンプルで、且つ生理学的なお話です。
効率的に酸素を吸収できる呼吸をしている人の方が、そうでない人に比べて合理的な身体操作を行っているのです。

お腹を弛緩させ、横隔膜を活用する呼吸を学ぶには中々に良い一冊かと思います。
これに併せて、横隔膜と連結する大腰筋を鍛え、お腹の外筋や強張りを丹念に取り除く工夫をしていくことで、より効率的な呼吸が目指せるのではないかと思います。