2010年8月30日月曜日

オトコの仮面消費



「女性が強い時代」と言われて久しいですが、一方で「男の存在感」は薄くなり続けているように思われています。
実際、企業のマーケティング等においても、如何に「女性を取り込めるか?」という視点から商品開発等が進められているようです。
特にこれまで男の専門分野だと思われていたような商品(車は家電製品など)においても、女性側が主導権を握るようなケースが増えているようです。


しかし、それでは本当に男は「お金を使わない」生き物なのか?
本書では「そうではない」ということを主張し、男の生態系について実例を挙げながら「男のお金の使いどころ」を探っていきます。

読んでいると「あ~そういうことあるよね…うんうん」というようなお話が続々と出てきます。

また、昨今の定説である「ニッチな部分を狙っていく」というマーケティングの常識に対して果敢に戦いを挑んでいる本でもあります。
「王道」において如何に商売をしていくのか。
それは企業の規模には関係がないのではないか?ということを考えさせられる本です。

2010年8月28日土曜日

メールの超プロが教えるGmail仕事術



今や検索エンジンとしてだけでなく、本当に多くのサービスを提供しているgoogle社。
日本ではyahooと手を組む、とのことで正にgoogle帝国、とも言えるような状況になっています。


そのgoogleが提供しているサービスの一つがGmailと呼ばれるウェブメールサービスです。
本書はそのサービスをどのように活用していくか、ということを説明している本です。

本書と面白さとして「こういう設定にするとこう使えますよ」というレベルで話を終わらせていないことでしょうか。
具体的には、Gmailを使った情報の総合管理のような方法に触れています。
主な使い方は、Gmailをストレージとして活用するようなイメージでしょうか。


クラウド、と呼ばれるものが言われ始めて少し経ちますが、これなどはそういった動きの分かりやすい例の一つなのかも知れません。

メール絡みで困っている人、情報の整理がどうも出来ていない人など。
そういう方には中々オススメの本です。

2010年8月24日火曜日

事実認定の手法に学ぶ荘司雅彦の法的仮説力養成講座



検察や弁護士、それに裁判官などの司法に関わる人々は「真実を明らかにしようとしている」と一般人は考えがちです。
しかし、実際はそうではなく「如何に説得力のあるストーリーを構築し、それを提示し、その妥当性を判断していくのか」というまるで小説家のようなお仕事をしているようです。

客観的な事実を集め、その中から確実性が高いものを選択し、そこから経験則や論理的な推認などを用いながらストーリーを構築していく手法は、非常に精密であることが求められます。
また、ストーリーを作るといっても「好き勝手に作って良い」ということではありませんし、また「相手から突っ込まれること」を前提にしながら自説を構築していかなければなりません。


本書では、そうやって緻密にストーリーを構築していく手法を経営などにおいて利用していくべきだ、という主張がなされています。
また、過去のストーリーを構築するための手法を現在から未来に向かって伸ばしていくことも有効なのではないか?と提起しています。


ストーリーの構築は、経営においても必要不可欠なものです。
そのとっかかりとして、このような「法的仮説力」を用いるのも有望な方法なのかもしれません。

2010年8月20日金曜日

数学ガール ゲーデルの不完全性定理



「数学ガール」シリーズの第三作です。
自分自身の無矛盾性を自ら証明することはできない、というゲーデルの不完全性定理に関する本です。

さて、この不完全性定理、どちらかというと「否定的な意味合い」で使われていることが多いようです。
「数学の限界」を証明してしまった悲劇の定理として扱われていることの方が多いように見受けられます。
そしてそこから拡張解釈をして「理性の限界」や「合理性の限界」に話を展開しているようなケースが多々あるようです。
私自身も、そのような意味合いでこの定理を捉えている部分があります。


と同時に、ここ最近ずっと考えている「安易な一般化」という話があります。
ゲーデルの不完全性定理は本当に「全ての合理や理性、ロジック」についてその限界を提示しているようなものなのか?
私にはその部分がよく分かっていませんでした。


本書を読み終えての感想は、やはり「安易な一般化」に対する一層大きな懸念です。
この本を読むと、ゲーデルの不完全性定理が「あくまで数学上の問題」であることや「理性や論理の限界」など対象にしていないことが分かります。


その内容の鮮烈さから非常に恣意的な利用をされているこの定理について、少し違った側面から触れてみることが出来る本です。

2010年8月9日月曜日

般若心経は間違い?



般若心経という経典については、本当に様々な解説書が出されています。
非常に難解、かつ色々なところが省略されて書かれていることからその意味を理解するのが難しいというのが一般的な理解のようです。


本書は、そういった「般若心経」について別の視点から分析をしています。
般若心経の元ネタとなったであろうものから解読を進めるのです。
その結果は・・・是非本書をお読みになって確認してください。
おそらく「日本の多くの仏教徒」が「え~~~~!!!!!!!」と言う事請け合いの結論が出てきます。


本書を読んで改めて感じられるのは、仏教という哲学が非常に科学的に出来上がっていることです。
「迷信」と呼ばれるような類のお話がほとんど存在しません。
生命に関する定義、起こっている事象に対する理解など、非常に合理的な思想を一貫して通していることが分かります。


物事の無常観、一切は苦であるという思想。
そして「役立つことしか話してはいけない」という徹底した合理主義の追求。
案外と、仏教のようなツールの方が昨今のご時世には「使える場面」が多いのではないか?とすら感じさせる一冊です。

2010年8月3日火曜日

史上最強の哲学入門



「哲学的な何か」というシリーズで有名な飲茶さんの著作三冊目です。

ここ最近、色々な機会に主張していることなのですが、哲学というものは非常に「実践的」なツールだと私は考えています。
昨今のような「何がなにやらよう分からない状態」にあって、自分の寄る術があるということは、それだけで大分生きやすくなるのではないかと。

哲学というものが「あまりにも大仰で」「難しく」「自分には関係のないもの」と切り離してしまうには、あまりにももったいないと思います。
平たく言えば、マネジメントやマーケティングの発想法だって、根幹には哲学(宗教的なものも含む)が存在しているのです。


本書は、その哲学についてエンタテインメント性を交えながら、歴史を追うのではなく「項目別」に体系立てて解説することで「哲学の使い方」を説明してくれます。

今のあなたにとって、哲学があまりにも遠い存在ならば、是非手元に一冊。

2010年8月1日日曜日

数学ガール フェルマーの最終定理



以前にご紹介した数学ガールの続編です。
今回のメインテーマはかの有名なフェルマーの最終定理。
数式としては非常に分かりやすいこの定理なのですが、その証明がなされるまでには本当に多くの方向への試行錯誤が必要でした。
また、その努力が連続した形というわけではなく、まったく別の道を歩いていたはずの人たちがふとしたきっかけから合流することになった経緯など、実に多くのドラマが生み出されることになりました。


「異なると思われていた分野」が根っこのところでつながっているのかもしれない、というのは多くの学問においてあることです。
ただ、安直に結びつければ良いというものでもありません。
そこに至るまでの間に「本当にこれは同じ根っこをもつのか?」ということについて、慎重にも慎重を重ねた上で結び付けなければなりません。
そうでなければ、あらゆる課題についてなんでも「あ~これはアレと一緒だね」という安直な決めつけで解決を図りかねません。


フェルマーの最終定理についても、結びつきが美しいのはもちろんなのですが、実はそこに到るまでの「前提を巡る試行錯誤」が重要なのではないかと思います。