2008年12月30日火曜日

産業人の未来



経済的な成果が最も重要である、という大前提は何時ごろから出来たのでしょうか?
多くの人が「金に汚いのは嫌だ」と言いながら「金がない」と文句を言っています。

この本は「経済を超えた価値を探ることの重要性」について書かれています。
個人と社会の関係がどのようにあるべきなのか。
最も重要とされる価値観はどこにあるのか。
この本が書かれた1942年、世界大戦の最中において著者は現在起こっている問題のすべてを見越していたかのようです。


「社会における役割を与えられない人間」がどれほど不幸なのか。
「役割が与えられるという点において、戦争は合理的な手段である」という言葉をどう考えるべきなのか。
雇用の問題、右派や左派を超えた「希望は戦争」という論旨すら出てくる現状。

今、この文章を読んでいるあなたは社会的な役割を持っているでしょうか?
そしてあなたの周囲には社会的な役割を与えられずに「社会の根なし草」となっている人が多数存在していることに気がついているでしょうか?
あなた自身は社会に対し「何を成したいのか」を真剣に考えているでしょうか?


私はここで「世界を構築する」ことを得意とする日本人の能力が活きてくるのだと考えます。
西洋の理性万能主義では成しえなかったものを、今こそ構築できるのではないかと。

2008年12月19日金曜日

金持ち父さん 貧乏父さん



発刊当初大きな話題を集めた本書ですが、その内容には賛否両論があります。
本書の主張を簡潔にまとめると「資本主義万歳!」です。
経営というものの一つの側面である「お金の使い方」ということに関し、極論ともいえる論理展開をしています。

個人的にはこのような論理のみで世の中が動いて欲しいとは思っていません。
ただし、多くの方が自覚する、しないに関わらず「お金についての不満」を口にしている以上、この本の主張を部分的には認めざるを得ないのではないか、と私は考えます。


人生における「投資」というものについて、色々と考えさせられる本です。
一度読んでみて下さい。
ひょっとすると物凄くあなたの気分を害するかもしれません。
しかし、それを超えて理性的に本書の主張を捉える事で、現在のあなたに足りないものが見えてくるかもしれません。

経営学入門

 

経営学という学問は、実に多くの分野の学問を内包しています。
人材の管理、営業方法、商品の開発等々、あらゆる要素が経営には求められているからです。
どの要素が欠けても、その企業の活動にはほころびが生じてしまいます。

本書はそんな経営学の入門書です。
経営学の多面的な要素を網羅的に紹介しているので、目次を読むだけでも勉強になります。
また日本企業が陥りがちなミスや状況についても繰り返し指摘がされています。


私は最近あらゆる所で言っているのですが、これからの時代は企業も個人も自分を経営する必要性があります。
自分のやりたいことを想い、そのためにやるべきこととやるべきでないことを考え、それを実行するための手段を見つける。
これらは全て経営という手法そのものです。
経営とは「自己表現のための手段」なのです。

経済情勢や雇用環境の悪化など、企業も個人も自分の生きる道をコントロールする必要が高まっています。
皆様も是非一度経営について考えてみて下さい。

2008年12月11日木曜日

「経済人」の終わり



敢えて断言をします。
「蟹工船」なんぞをありがたがっている暇があるなら、この本を読むべきです。


2008年冬現在起こっている現象に対して、これ程の的確な本があったのか、という思いがします。
ドラッカー氏の主張として「近代合理主義の破綻・終焉」とでも言えるようなものが根底に存在するようです。
西洋で生まれた資本主義・共産主義、そのどちらも既に破綻が確定している議論であって、現状のあらゆる閉塞感に対して有効な手段足りえないことなど、世界大戦があったころから分かりきっていたことだったのがこの本で確認出来ます。

この本の初版は1939年発刊です。
なぜファシズム・ナチズムと呼ばれるような勢力が発生し、あれほどに受け入れられたのか。
ドラッカー氏は「社会全体を合理的に捉える事の破綻」を原因として挙げています。

「経済」を世界の中心にすえる「経済至上主義」はすでに終焉・崩壊の一歩手前にあるのかもしれません。
その時に我々は何をなすべきなのか、この本にはその指針が含まれています。


個々人が自分を合理化し、経営・マネジメントすること、その重要性を理解させてくれる超推奨本です。

2008年12月10日水曜日

企業価値を創造する 会計指標入門



下で紹介している本と同じ著者のものですが、こちらはもう少し難易度が高いものとなっています。
より具体的な会計指標を10個取り上げ、それぞれの指標を用いるべき状況を想定した上で具体的な事例を挙げながら説明をしています。

具体的な指標を理解することで、次のような事項に対応することが出来るようになります。
・企業経営者が自社の課題・問題を把握するために利用
・投資家が個別企業の株式を購入するに当たっての投資判断材料として利用


2008年冬現在の経済状況を考えるに、各指標の意味合いが少し変わったような気もします。
しかし、本書において最重要指標とされている「フリーキャッシュフロー」の重要性は益々高まっており、この項を勉強するだけでも本書には一定の価値があるのではないかと思います。

やや専門的ではありますが、財務諸表の実践的な読み方を勉強されたい方は是非ご一読を。

ビジネススクールで身につける 会計力と戦略思考力



会計というと「簿記」だとか「仕訳」、「帳面」や「転記」といったお話が思い浮かぶのではないでしょうか。
これらも確かに会計の一部ですが、全てではありません。
会計とは「企業活動の金銭的な側面を評価するための学問・ツール」であって、決して手続きだけを踏んでいれば終わるようなものではありません。


この本は「会計帳面を作る」のではなく「会計帳面を使う」ための基本的な考え方を学ぶことが出来ます。
会計帳面を利用することで、その企業の問題点やこれからの行動指針など、様々な検討や分析における重要な指針とすることが出来るのです。

いくつかの例題が含まれており、会計知識ゼロの状態から始めても楽しめるように工夫が凝らされています。
文庫本一冊で非常に多くの内容を学ぶことができます。
コストパフォーマンスにも優れたこの一冊、強く推奨させて頂きます。

フロー・カンパニー 飛躍し続ける個人と組織に生まれ変わる法則



精神的な弱さが理由で物事が上手くいかないことはよくあります。
試験本番に限って、コンクールの当日に、いざプレゼンの本番がきたら…。
今までと違う環境にとまどって、やったことがないから、あの人は苦手だ…。
どうせ自分はだめだから、やっても無駄だし、どうも今日は気が乗らない…。

心理が揺れ動くのは人間として当然です。
また過去の経験則や思い込みから決めつけを行ってしまうのも生き物として仕方のない性質です。


本書はそんな「揺れる」「とらわれる」といった心理的な動きをどのようにコントロールするかについて書かれています。
著者はスポーツ医学・スポーツ心理学の専門家であり、独自のメンタルトレーニング方法を取り入れた活動を行っています。
最近ではこのトレーニング方法を芸術家やビジネスの世界でも活用するケースが増えているようです。

この方法の有効性自体をこの本だけから確証するには至りませんが、書いてあることは中々に納得できることが多く書いてあります。
私自身も常に「プレッシャー・ストレス」と呼ばれる類のものと付き合っている現状を考えると、この本に書かれている「フローによる活動」という考え方は非常に魅力的に見えてきます。


現在強いストレスで悩んでいる方や人材育成に悩まれている企業様には御一読頂く価値はあるのではないかと思います。

2008年12月8日月曜日

ライフサイクルイノベーション



イノベーションという言葉は最近よく使われるようになりました。
「革新」だとか「改革」だとか「改善」といった意味合いで使われているようです。

「このシステムを導入すれば飛躍的な成長が!!」というように、ITやシステム系の企業が自社を売り込む際にこの用語を頻発していますが、実際にはそんな簡単なものではありません。
本当の意味でのイノベーションとは、全社的な仕組みを変える位の大きな枠組みでとらえる必要があります。


この本は「市場の成熟度」や「商品の一般化度」、「企業の経営姿勢」などの前提条件から、数多くあるイノベーションをどのように選択するのかということについて詳しく説明がされています。
当り前といえば当たり前なのですが、業種や業界の動向、商品の普及度などにより企業が取るべき行動は差異があって当然です。
イノベーションもしかり、ある企業にとって有用であったイノベーションが他の企業にとっては有害となる可能性も決して低くはないのです。

この本では14類型のイノベーションを紹介するとともに、それぞれのイノベーションがどのような状況に置かれている企業にとって有用であるのかが説明されています。
そして大切なのは「複数のイノベーションではなく、一つのイノベーションに特化すること」だと繰り返し述べられています。(ある程度の例外や幅はもたせてありますが)


「ようこそ、生存競争の世界へ」の一言で締められる本書、閉塞感にとらわれている企業にとっては一読の価値があると思います。

2008年12月5日金曜日

Harvard Business Review 2008年6月号



Harvard Business Reviewは経営に関する包括的な研究論文が掲載される雑誌です。
内容は多岐に渡りますが、その月ごとに一定のテーマが決められており、そのテーマに沿った内容の論文が多数掲載されることから、各論者の比較や多面的な分析を読むことが出来ます。

今回ご紹介する号では、人材に関する特集が組まれていました。
女性が出世をするに当たって存在するという「ガラスの天井」の話や、来るべき高齢化社会を迎えるに当たって企業が高齢者をどのように活用していくべきか等、経営者のみならず個々人一人一人が考えるべきことが論じられています。
集団で仕事をすることで能力が向上することを「相乗効果」と呼びますが、その相乗効果が最大限発揮されるためにはダイバシティ(多様性の受容)という発想法が重要になってきます。
老いも若きも、男も女も、自分と違う人がいることがどれ程良いことなのかを知り、理解し、受け入れることが企業にも個人にも求められています。


個人的な感想としては、高齢化社会を迎えるに当たって商品やサービスの最良の提供者となり得るのは高齢者自身であると考えています。
情報技術の進展など、肉体的な不利を補うための手段は日進月歩で進んでいます。
日本が、世界が「元気な働ける高齢者」で溢れ返るようになることが、高齢化の進展が著しいと言われる先進国において目指すべき課題なのではないかと考えます。


企業の雇用においても、自分の能力開発においても、是非これらの観点を考慮してみて下さい。

2008年12月3日水曜日

孫子・戦略 クラウゼヴィッツ その活用の方程式



戦略論に関する古典として根強い人気を持つ孫武の「孫子の兵法」とクラウゼヴィッツの「戦争論」に関する比較論をまとめた本です。
比較をしながら各戦略論についての説明もされていますので、両戦略論について最初に学ぶに当たってもとてもわかりやすい内容となっています。

戦略という概念は競争に勝つために存在します。
これらの競争に当たって場当たり的に対処をしていると、自分の資源を使い尽くし、疲弊が進み、最終的には滅亡への道を歩むことになりかねません。
まず考えるべきは以下の点です。
・何をもって戦うか
・自分の現状の確認、望むべき状況とのズレの認識
・競争相手と如何に戦うか

両論は上記の各状況について想定している前提が大きく異なっています。
そのことから本書では「戦略論には使うべき場面がある」ということを説き、各論の特徴を浮かび上がらせて有効に活用する術を見出そうとしています。

現代の事業経営にもつながる話が沢山載っていますので、軍事に興味がない方でも面白く読めるかと思います。

見える化 強い企業をつくる「見える」仕組み



企業活動においては様々な行程が存在します。
製造業ならば資材の調達から製造加工の現場、商品の保管から販売、そしてアフターフォロー等。
その多くの工程において、必然的に様々な問題が発生します。


ここで最大の問題は「企業が問題を認識していない」ことです。
例えば製造工程において決定的な不具合が生じていることから生産性が大きく落ち込んでいるのにその事に気がついていないなど。
このような問題は「問題が見えていない」からこそ発生しています。

普通にしていては見えないものは問題だけではありません。
現状の把握や顧客の動向、それに蓄積された企業内のノウハウなど、様々なものが企業内部で見えないまま放置されています。


本書ではこれらの事項について「如何に見えるようにするか」「見える事でどのような効果が望めるか」といった点について多くの事例を用いながら説明をしています。
「今ウチの企業には特別問題はないかな」という方には是非読んで頂きたい本です。
本当は「問題が見えないだけ」なのかもしれませんよ。

マーケティングをつくった人々



現代マーケティング論の大家10人の話をまとめた本です。
マーケティングという学問が如何に広範囲を対象としているのかがよく分かります。


各論者の間では論旨がぶつかっているような点も存在しますが、その根底にあるのは「顧客主義」です。
顧客側が情報収集力・価格交渉力などの色々な力を手に入れた現代において、企業のマーケティングがどのように行動すべきなのか、という点について色々な面からの切り口を見ることができます。

無論、各氏には多くの著書が存在しますので、この本でその人の言いたいことのポイントを掴み、その後に各著書に入っていくのも面白いのではないでしょうか。


「良い物を作れば売れる」という企業側の勘違いは既に通用しない時代が来ています。
適切なマーケティングの組成は、企業規模の大小を問わず喫緊の課題といえるでしょう。

フィリップ・コトラーの「マーケティング論」がわかる本



マーケティングという学問は「広告・広報」や「営業」といった分野のみを対象にしたものではありません。
マーケティングとは「目的を達成するための仕組みを作る」ためのものであり、非常に広い範囲をカバーしている学問です。


フィリップ・コトラー氏は現代マーケティング論の始祖のような存在です。
経営をするにあたり、自社(または自分)をどのような位置づけに置くのか。
その位置でどのような事業活動(他者との差別化や販売促進など)を行うのか。
顧客は自社にどのような価値提供を望んでいるのか、また自社はどのような価値を提供したいのか。

基本姿勢にあるのは「顧客第一主義」です。
まず最初に買い手があり、そこに売り手が入っていくことから事業が成り立ちます。

この本はそのコトラー氏の理論の本当のさわりを非常に簡潔にまとめ、図解化したものです。
とりあえずこの一冊を読んでから氏のより難しい本へと進むと、理解がしやすいのではないかと思います。

2008年12月2日火曜日

稲盛和夫の実学 経営と会計



京セラの会長である稲森和夫氏の著作の文庫版です。
氏は元々会計については全くのど素人であったそうです。
しかし、企業経営を続けていくに当たり「真に経営のために役立つ会計が必要である」という発想法に立ち、そこから会計に対する世界観を構築していきました。

大企業の会長が書いた本ですので、内容もさぞかし大企業向けなのだろうとお考えかもしれませんが、実際にはさにあらず。
実はこの中で触れられている手法の多くは中小零細企業においてこそ有効活用できるものが多くあります。
・キャッシュベースで考えること
・物事の対応を一対一で考えること
こういった考え方をうまく取り入れる事は、小さい企業の資金繰りにこそ有効な手段です。

お値段もお手頃ですので、是非お手元に一冊。

管理会計



一口に会計といっても実は色々な種類があります。
投資家などの外部関係者に対して公表するために利用される会計手法を「企業会計」と呼びます。
それに対して内部関係者が企業活動における意思決定や戦略の構築のために利用するための会計を「管理会計」と呼びます。

会計という仕事を「帳面を作ること」と「作った帳面を使うこと」の二つに分けるとすると、企業会計と管理会計の違いは「帳面の使い方」の違いにあると言えます。

本書は管理会計についての大学生用テキストです。
その世界では非常にメジャーなテキストであり、分かりやすい例題と多くの実例が用意されています。
全てを網羅的に読むとそれなりに大変ですが、拾い読みをするだけでも会計的な側面に触れることが出来ます。
「会計を使うということはこういうことなんだ」ということを実感したい方には良い一冊と言えるでしょう。
なお、テキスト内の例題については別売りの解答集が用意されています。

ドラッカー入門ー万人のための帝王学を求めて



多様な学問分野の研究において多大なる貢献を遺したドラッカーという人物がいます。
彼の著作は経営全般・マーケティング・社会学・哲学等、非常に広い分野に渡っています。
その著作の大部分の邦訳を担当した上田惇生氏によるドラッカー論です。

ドラッカー氏自身が「対象の思想を最も効率よく理解できるのは、その翻訳を担当することだ」と述べている通り、上田氏のこの本はドラッカーの思想をとても効率よく学ぶことが出来ます。
自分をマネジメントすることの重要性、多様性を受け入れることの重要性、高齢化社会を迎えるに当たっての心構え等、氏の言葉はまるで現在起こっている問題の全てを予見していたかの如く語りかけてきます。


閉塞感が漂う現代日本において最も必要なのは、個々人が自分をマネジメントすることを目指すことなのだと私は考えます。
企業経営者も、サラリーマンも、大人も、子供も、男も、女も、皆自分を「経営」する発想が必要なのではないでしょうか。
必要なのは「超一流のサラリーマン」を目指すための考え方と技術・手法です。


是非一度お読みになってみてください、目から鱗の連続が待っているかと。

コンサルタントの「現場力」


コンサルタントという職業がどのようなことをやっているのかを簡潔に、しかし非常に熱い観点から語っています。


タイトルにもあるように、コンサルタントの仕事は「机上」で生成されるのではなく企業の「現場」において行われます。
顧客企業の社員と一緒に物を販売したり、製造の現場に出向き社員の意見を聞いたり、実際の会議に出席して役員と喧嘩したり等々…。
そして、何よりも大切なのは「思い・ビジョン」といっさものの存在である事を繰り返し訴えています。


無論、思いだけでは企業経営は出来ませんので、それを達成するための技術を身につけることも必要です。
そういった技術を身につける上での注意点についても指摘されているので、コレ一冊を手元に置いておくだけでも「自分の習得すべきこと」を考える際に大きな手助けとなるのではないでしょうか。

2008年12月1日月曜日

このBlogの趣旨

このBlogは元々事務所HP内に設置してあった書籍紹介の
コーナーを独立させるために作りました。
相変わらず一日一冊ペースで本は読んでいますので、
少しずつ紹介を続けていくつもりです。

ここで紹介する本が、皆様の思い、ビジョンを達成するための
一助になれば幸いです。