2009年2月26日木曜日

おちおち死んでられまへん 斬られ役ハリウッドへ行く



前回ご紹介した福本清三さんに関する二冊目の本です。
福本さんは色々な人の後押しでハリウッド映画「ラストサムライ」に出演することになります。
そこで感じたアメリカ映画のパワーや日米の映画に対する考え方の違いなどが本の中で紹介されています。


生活のことを考えれば大部屋俳優という職業は決して楽なものではありません。
氏も本の中で繰り返し「ウチは貧乏だから」という話をします。
しかし、同時に氏は「仕事は金じゃないと思うんです」とも繰り返します。

福本さんは常に「人のため」に自分の力を使うことを考えています。
「如何に惨めに殺されるか」を常に考えているという氏のこの仕事に対する姿勢、私も含めて多くの人が見習う必要があるのではないでしょうか。

福本さんは「立ち回りをしているときには命が輝いている」と言っています。
働ける事の喜び、仕事は金のためにするのではなく、自分のためにするものなのだと私も思います。

2009年2月25日水曜日

どこかで誰かが見ていてくれる



日本一の斬られ役と名高い福本清三さんへのインタビューをまとめた本です。
福本さんは「斬られ続けて2万回」と名高い東映の大部屋俳優で、数々の時代劇で主役から斬られ続けてきました。

殺陣においては斬られる役が絶対に必要です。
主役がいて、悪の主役がいて、その他大勢の悪の手下が必要になります。
福本さんは「その他大勢」として四十数年間斬られ続けたわけです。


福本さんは決しておごらず、謙虚にご自分のことを語ります。
「目の前のことを一生懸命やっていただけ」というお言葉は、ともすれば色々なことを他人のせいにしてしまいがちな多くの人にとって耳に痛い言葉なのではないでしょうか。

その一方で、氏は「運が良かった」とも語っています。
良い人に巡り合い、支えられていることのあらがたみを淡々と語り続けます。


人は多くの場面で「その他大勢」を演じるしかありません。
しかし、そんな時でも大切なのは「自分がどうするのか」なのではないでしょうか。
多くの方に読んで頂きたい一冊です。

狼と香辛料



所謂ライトノベルと呼ばれる分野の本です。
ファンタジーの世界を舞台に、主人公である旅の行商人が「豊穣の神」と呼ばれた少女と旅をします。
彼らは方々の街で色々なトラブルに巻き込まれ(そうでないと物語になりませんので)、それを解決していくことになります。

ファンタジーの世界で問題解決といえば「剣や魔法」が主流ですが、この物語はそのトラブル解決に当たり商売を手段として用いています。(少々の反則技もあるのですが)
国の貨幣制度や市場心理の動きなど、現実の世界でも度々話題になるような話が次々に登場します。


作者の方は経済学や商取引について勉強をされているようで、理論的に考えて正しいと思われる話の展開をしていきます。
敢えて倒錯的な楽しみをするとすれば、現実の世界との乖離を楽しむのも良いでしょう。
例えば作中では「強い国の通貨が高くなる」という話が繰り返し出てきます。
しかし、現実の世界では「弱い国と思われる日本の円が高くなっている」わけです。
この理論と現実の齟齬はどこにあるのでしょうか?
今までの理論が間違っていたのか、古くなったのか、あるいは一時的に狂っているだけなのか。
色々な分析が出来るかと思います。

エンタテイメントとしても、経済や商取引のエッセンスを勉強するのにも面白い本です。
(あとは「男女の駆け引き」が目いっぱい楽しめます。)
気楽に読み始められる小説です。

2009年2月21日土曜日

ライバルに先んじろ 指定管理者制度



指定管理者制度というものをご存知でしょうか?
日本には多くの公的施設が存在します。
図書館や保育園、体育や文化的施設などの所謂ハコモノと呼ばれる類のものです。
これらの施設の多くが慢性的な赤字に悩まされていたり、利用者数が確保されず有効活用されているとは言い難い状態にあるのは皆様もご存じのことかと思います。
この制度は、こういった公的施設について民間の業者を含めた第三者による運営をすることにより、施設の有効活用を推進しようとするものです。

実はこの制度については、多くの民間企業にとって魅力的な市場となるのでは、という説があります。
今後多くの公的施設が指定管理者制度により民間に任されていきます。
しかし当然ながら委託を受けるに当たっては競合との戦いに勝たなければなりません。


本書はそんな指定管理者制度を受注するための方法について考察した本です。
その内容としては「極普通の経営学としての知識」をベースとして、少しの「対役所用の考慮」を加えるようなものです。
土台にあるのはやはりしっかりとした経営に関するスタンスなのです。

経営学に関する書籍としても読める本書、制度に多少でも興味のある方は是非ご一読を。

事業戦略のレシピ




戦略という言葉は色々な場面で多用されていますが、その定義は一定ではありません。
ここでは「自分・自社の長期的な方針・目標」という意味合いで戦略を捉えておきます。

このような視点は自分の行動を見失わない為に必要不可欠です。
戦略を決めずに行動を起こしてしまうと「そもそも何を目的にしていたのか」を見失ってしまいがちです。
(製造メーカが突然レジャー産業に手を出したような場合を考えてみて下さい)

多くの企業が景気の良い時期に異様な多角化や金融商品などに手を出し、後に倒産する憂き目にあっていますが、これは当初策定した戦略を忘れてしまったようなケースが多くみられます。


本書は戦略を策定するに当たってのツールを紹介しています。
自社事業の内容の定義、同業他社との比較、市場における自社の立ち位置をどこに設定するのかなど、戦略の策定に当たってはポイントがあります。

実際には紹介されているツールをそのまま使うのではなく、自分なりにカスタマイズする必要があります。
そのためにも、まずは土台となる知識を身に付けなければなりません。
本書は戦略を考えるに当たり、入門書として非常に分かりやすいものとなっています。

図解!会社にお金が残らない本当の理由



「勘定あって銭足らず」という言葉を聞かれたことはありませんか?
世の中には「儲けがあるのに金がない」というケースが「非常に」多くあります。

多くの方が「そんなことがあるはずがない」「どうしてそうなるのか訳が分からない」という反応を返されます。
そしてその原因を知らないまま企業経営や家計管理をするために、気がつくと「何故かお金がない」という事態に陥ってしまうのです。


本書は企業にお金が残らない理由を図を使いながら非常に簡潔に説明してくれます。
私自身、非常に感銘を受けた本であり、お客様に自腹で買ってプレゼントをしたことがあるくらいです。

企業が潰れるのは利益がないからではありません、お金がないから潰れるのです。
この両者の違いをしっかりと理解し、適切な資金管理に努めることが現在のような経済の難局を乗り切るために絶対必要不可欠な発想です。
その為の指針として、是非本書をご活用下さい。

世界一やさしい会計の本です



会計の勉強というと、皆さん「簿記」の勉強を思い浮かべるのではないでしょうか?
簿記の勉強とは「帳面の作り方」の勉強です。

しかし、世の中の多くのテクノロジーがそうであるように、全ての人が「作り方」を知っている必要はありません。
むしろ大切なのは「使い方」を知ることです。
皆さんは自分で車やPC、インターネットや電話の仕組みを知らなくても使いこなすことは出来るはずです。
それが、何故か会計については「作り方を勉強する」ことが最も大切かのように語られてしまいます。


本書は「女子大生会計士の事件簿」などで有名な山田真哉さんが書かれた会計の入門書です。
細かい話は抜きにして、会計の使い方を最初に勉強するためには非常に優れた本かと思います。

株式投資や就職・取引開始・融資申し込みに当たっての企業診断など、会計を使えるようになることで経済活動の幅は確実に広がります。

2009年2月19日木曜日

戦略PR 空気をつくる。世論で売る。



昨日ご紹介した「明日の広告」と兄弟関係にあるような本です。
繰り返しになりますが「明日の広告」では現代の消費者に商品を買ってもらえるような広告を考えるには、以下の2点が重要であるという指摘がされています。
・消費者視点
・各メディアごとの特性を掴み、部分最適を目指す

そして本書ではこれらの前段階でもある「世論」というものを作り出すことの重要性が訴えられています。
「明日の広告」でも本書でも広告はラブレターに例えられていますが、本書は「ラブレターを相手に渡す前に、良い返事を貰えるような雰囲気を作っておくこと」について解説がされています。
(雰囲気を作った後に実際にどのように手渡すかについて書かれているのが「明日の広告」です)


「世論なんてそう簡単に作れるのか?」
「大きな企業じゃないと無理なのでは?」
といったもっともな疑問についても本書はきちんと答えています。

二冊併せて読むことで、より大きな価値を引き出すことができます。

2009年2月18日水曜日

明日の広告



広告に関する話では、過去数年一つの傾向がみられます。
・ネットの流行によって既存メディア(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)は衰退する
極簡単にまとめるとこのような主張です。

これはある意味で当たっている部分もあります。
今までの広告は「企業側が消費者に対して企業の言いたいことを言ってお終い」という形態しか存在しませんでした。
それがネット、BlogやSNSなどの発展により、消費者側が情報を発信し、同様の商品を厳しく評価し、企業の言い分を厳しくチェックするようになりました。
一方的に「良い商品でしょ?」と売り込んで買ってこれるほど、現代の消費者は愚かではないということで広告の力は今後失われていく、という傾向は確かにある程度進みました。

しかし、この主張は極論に過ぎるのではないか、というのが本書の主張です。
本書の主張を極簡単にまとめると次のようになります。
・情報を伝えられたがっている人、つまり消費者のことをひたすら観察し、それから手段を考える。
・手段の優劣は場合によりけり、ラジオがテレビに勝ることもあれば、ネットが常に優れているとも限らず、大切なのは部分最適を図ること。


不況期になるととかく簡単に削減されがちな広告費ですが、適切な予算配分を考えれば「安価で」「効率の良い」広告を出すことは可能なはずです。

2009年2月6日金曜日

ブレークスルー思考



ハーバードビジネスレビューに投稿された論文の中から創造性やイノベーションに関するテーマについての論文を集めた本です。
日本版の雑誌では未収録の論文も含まれており、中々に読み応えがあります。

個人的には「観察」に関する論文が最も面白いと思いました。
「顧客のニーズを掴む」と言うのは簡単ですが、実はこれには大きな落とし穴があります。
実はニーズそのものを本人が認識していなかったり、そもそもどこにもそんなニーズは存在していないケースが非常に多いからです。
そのような状況下で、顧客や見込み顧客にどれだけ市場調査をしても魅力的な商品やサービスが産まれるかどうかは非常に疑問です。

大切なのは顧客や見込み顧客を観察し、解釈をして提示することです。
例えばメイド喫茶なら、この世界のどこを探したって「メイドさんがウェイトレスをやってくれる喫茶店が欲しい」なんて言っていた人はいませんでした。
つまりそんなニーズは存在していなかったのです。
ところが現に今では小規模な産業として成立するに至っています。
(一時期ほど話は聞かないので、現状がどれくらい流行しているのかは少し分かりませんが…)
一部男性のメイドさんに対する欲求を観察し、実際にコミュニケーションをとれる場があれば受け入れられるのではと分析・解釈をし、喫茶店という形で提示をしました。
一つの成功事例として考えると中々面白いのかもしれません。


常に新しいことを考える必要があるこのご時世、皆さんにも活用できる場面があるはずです。
是非ご一読を。