2009年3月15日日曜日

フォーカス!



「全ての人に対して販売したい商品」は「全ての人から相手にされない商品」という話があります。
簡単にいうと「誰に買ってもらいたいのかよく分からない」からです。
買ってもらいたい対象は限定的にしたほうが、結果的には事業として上手くいく可能性が高くなります。

万能兵器(空を飛び、水中に潜るような車)と呼ばれるものは、映画007では魅力的に映るかもしれませんが、実際には非常に使いづらいものです。
陸上用としては普通の車に足りず、空を飛ぶには飛行機やヘリコプターにも勝てないでしょう。
水中は言わずもがな、潜水艦に勝てるはずもなく。
RPGで「勇者」と呼ばれる職業は、結局戦力の決め手にならなかったりします。
勇者職は、大抵が「そこそこ力が強くて、そこそこ呪文も使える」という能力です。
力なら戦士が、呪文なら魔法使いの方が強いでしょう。


本書は著者アル・ライズ氏の著書の中でも高い評価を得ている一冊です。
ズバリ、内容はタイトルの通り「フォーカス」することです。
事業内容を如何に限定し、絞り込むか。
これこそが企業を強くする真の方法であると氏は強く推奨しています。

多角化企業とは、つまり万能兵器のような存在です。
「ゆりかごから墓場まで」という表現がよく出てきますが、確かに冷静に考えてみると、ゆりかごならゆりかご専門店のほうが、墓場なら墓場専門店の方が良いイメージを持てるのではないでしょうか?
少なくとも、私は「ゆりかごと墓場を売っている会社」から買いたいとは思いません。

「関連性のある事業なら相乗効果が出るのでは?」という指摘もあります。
しかし、これすらも氏は「勘違いだ」と切り捨てています。
あくまで事業はフォーカスを続けていくことに意義がある、と述べています。


中々に難しい命題ですが、読む価値のある一冊です。
自分の人生の「核となるもの」に悩んでいる人にもお勧めです。
個人もフォーカスをしていた方が確かに強いかもしれません。

2009年3月12日木曜日

Harvard Business Review 2009年4月号



商売は「売っている商品の品質によって決まる」という考え方が通用しなくなっています。
どんなに良いものであろうと売れないものは売れませんし、その逆もまたしかりです。

大切なのは「売れる仕組み」を作ることにあります。
よく言われる「顧客のニーズをつかむ」という曖昧な言葉だけでは具体的にどのように行動をして良いのか分かりません。
必要なのは行動するための指針です。


本書では製品開発の方法や主力商品の選択、ビジネスモデルの構築方法などについて言及されています。
大企業のために書かれたかと思われる論文もあるので、小規模事業者がそのまま活用するのは無理があるものも含まれていますが、特に名論文として名高い「イノベーションのジレンマ」は読んでおいて損がない内容かと思われます。

巻末に掲載されている世界的なダンサーのインタビューは、創造性に悩む全ての人にとって一読の価値がある文章です。
経営者でも芸術家でも根っこにある課題は同じなのかもしれません。

2009年3月7日土曜日

ブランディング22の法則



皆さんは商品を購入する時にどのような観点から選別をしているでしょうか?
例えば牛乳を買う場合、製造メーカー・売っている店・個別の商品名・統一されたブランドなど様々な観点があるかと思います。
昨今では食品偽装問題などもあってか「どこで製造されているか」が一つの注目点になっていますが、ほとんどの商品についてはより表層的な「名前」だったり「色」などで選んではいないでしょうか?

本書はそういった広い意味でのブランド構築に当たって気にすべき点が22の法則にまとめられています。
「拡張するのではなく集中させるべきである」
「集中を極限まで行うと新しいジャンルになる」
「商品の質が問題なのではない、名前や色の方が重要だ」
いわゆる「愚直に商品を作り続けている人々」からは到底受け入れがたい話がこれでもかと繰り返されます。


私自身も思っていますが、商品の質の良さのみで市場に売り込みをかけるのは無謀です。
もっと「イメージ」や「ロマン」、「雰囲気」といった要素が昨今ではより重要性を増しているように感じられます。
そういった「商品に付きまとう属性」がブランドです。
本書の中では比較的大規模な企業が対象とされている提言もありますが、中小零細企業こそが気にすべき事項も多々書かれています。

2009年3月5日木曜日

笑傲江湖



武侠ものと呼ばれる分野をご存知でしょうか?
中国で非常にメジャーな分野ですが、剣だの秘伝書だの絶世の美女だのを巡って武芸者たちが我も我もと戦うとでもいいましょうか。
要は中国版のファンタジー小説のようなものです。


この分野で非常に名高い金庸という人がいます。
何でも中華圏では物凄い人気なのだとか。
「中国人の事が知りたければ金庸を読め!」とまで言う人がいるとかいないとか。

本作は氏の代表作として名高い作品です。
文庫本で7冊に及ぶ大作です…が、先に言っておきます。
危険です、時間が確保できる時に読み始めることをお勧めします。
ワタクシ、睡眠時間を削って読んでしまいました。
好みは分かれるのかもしれませんが…。

ちなみにあとがきを読むと分かるのですが、本書はある意味において「人間観察図鑑」でもあり「政治の書」でもあります。
とかくしがらみにとらわれがちな人間、どうして人はこうも拘束される人生を歩むのか。

2009年3月1日日曜日

マーケティング戦争



マーケティングというと「広告戦略」のようなものを考える方が多いかと思われます。
しかし実際には広告とはマーケティングの一部でしかなく、如何に質量共に優れた広告を使おうとも徒労に終わることもしばしば。

また「優れた商品さえ投入すれば必ず勝てる」という通説も昔から語られることです。
「自分の商品の良さに世間はいずれ気が付いてくれる」といった甘い期待から、愚直に自分の仕事を守り続けるような人が多くいます。
そしてこのような人は「職人気質」などと呼ばれ、さも美徳のように扱われたりすることも。


実際のところ、事業が上手くいくかどうかは同業他社との関係などに大きく影響されます。
自分より大きく、かつ似たような内容の事業を行っている分野に関してどれほど注力をしようとも、上手くいく可能性は限りなく低いでしょう。

王者には王者の、挑戦者には挑戦者の、ゲリラにはゲリラの取るべき戦術・戦略があるというのが本書の主張です。
そして業界の中の95%ほどの事業者はゲリラとして行動すべきなのに、さも王者のように振舞ってしまうことが失敗の原因だ、と述べています。


他者とは違う所に戦力を集中させ、占拠した市場を防衛する。
その市場は自分が守りきれる範囲に留めておくことが肝要である。
ゲリラは正面切って戦闘をしてはいけないのです。

本書ではクラウゼヴィッツの戦争論を度々引用していますが、マーケティングとは確かに戦争的な意味合いを多分に含んでいると言えるでしょう。