2011年1月9日日曜日

社会的共通資本



そもそも経済学の役割とは「豊かで公正な社会の構築」にあったのではないかと思います。
しかし、現在の社会情勢は「自分が如何に多くのものを手にするか」ということばかりが話題になるようになりました。
ここのところ繰り返し指摘している「所有感の充足」が第一のものさしになっています。

自由主義、新自由主義といった「小さな政府で市場に任せるべき」という傾向が強まり続けた過去10~20年を経て、現在の我々が「良い雰囲気」を感じてるかというと、到底そうとは言えないのではないかと思います。
どちらかといえば日に日に強まっていく閉塞感の中で、誰しもがどことなく世間に対して不満をいだいているのではないかと。

本書は「社会的共通資本」という思想のもとに、医療や介護、農業や教育などの各分野について「現在とは異なる公正、公平な社会の構築方法」について考察しています。
経済というものさしを使う場合でも「金銭的な経済」のみでなく、社会的な意義や体験といった非金銭的な価値についても比較をしています。

とかく「金で測れないものにこだわることは非合理だ」と言われがちな昨今ですが、実際には「ものさしを一つに絞ってしまうことがどれほど怖いか」ということを露呈しているのではないかと思います。
個人的には農業分野における規模の問題や、教育におけるインネイト(先天的)なものに関するお話が非常に興味深かったです。


繰り返し取り上げている「所与的感覚」というものともつながる部分があるお話です。

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