2010年11月8日月曜日

街場のメディア論



内田樹さんの大学でのメディアに関する講義をまとめた一冊です。
冒頭、キャリア論から始まり、他者から求められることによる自己の才能の発露について触れられています。
とかく「自分の才能を活かせるような仕事」という自己決定が重要なことのように思われている昨今にあって、この他者から与えられる「贈与」のような考え方(一度マルセル・モースは読まないといけない気がしています)が少しでも共有されると、今起こっている困った現象の多くは解決に導かれるように思います。

また、少し前にご紹介した「テレビの大罪」でも出てきましたが、メディアにおける「当事者意識のなさ」には驚くべきものがあると思います。
「なんということなのでしょうか」と言っているその張本人が、実はその事態を引き起こすことに確実に加担している、あるいは悪い状況が進行していることを知っていながら見過ごしている。

本書の中で展開される「電子書籍」に関する話はとても共感ができます。
私自身、事務所には自分で大量の小さな棚を買ってきて作り上げた書棚があります。
この書棚に並んでいる本から、私は私自身からの「何か」を受け取っているのかな、とよく思います。
これはCDでも同じでして、私はダウンロードで音楽を買ったことが一度もありません。
そして、今後も買わないと思います。


「資本化」というものに関することも含めて、色々と考えさせられる一冊です。

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