2009年9月15日火曜日

いつも「お金がない」と嘆いている社長のための 資金繰りルールブック


自分で書いた本をここで紹介する日がくるとは思いませんでした。
連休明け位から本屋さんには並ぶようです。

資金繰りの基本的な要素についてなるべく簡単な表現を用いて書いてみました。
特に「収益」と「収入」、「費用」と「支出」の違いについては繰り返し触れています。
この考え方が分かっていないと「利益があっても会社は潰れる」現象が起こる理由が分からないからです。

もう一つ付け加えるなら、資金繰り対策とはそれだけで成立するものではなく、結局のところ利益を獲得し続けることができる仕組み、すなわちマーケティングが構築されているか否かが非常に重要であるという点について触れています。
「借り換えを使ってどうにかする」的な発想の資金繰り対策がもてはやされがちですが、そういった方法は本質的な解決手段とはなり得ないということについて理解をしなければなりません。

現在の自分なりにベストを尽くした一冊です。
宜しければお買い求めください。

2009年9月13日日曜日

世界で一番シンプルな決め方の技術


意思決定というものは、我々が日常的に行っていながらその理屈についてまでは理解が及んでいないものです。
その日の機嫌や天候、体調や同行者といった実に様々な要因から選択は変化をみせます。
そして一つ一つの選択はそれほど大きな結果を招くことではないため、その選択の結果について評価の時間をとることはそれほどないのではないでしょうか。

実のところ、成果というものは余り気にもとめていないような小さな意思決定の連続から確定されているものです。
成果を出している企業の経営者は隙が少ないです。
事業から私生活まで、日常的な選択の連続が結果的に大きな差につながっていることを自覚しているからです。
「こっちは大きなこと」「こっちは小さなこと」と分けるのではなく、一つ一つの決断について責任を持ち続けることが最終的には大きな成果を生み出すことにつながります。


本書はそんな意思決定のための方法論をまとめた本です。
内容は大きな二つの質問に分かれ、それぞれがさらに三つの小さな質問に分かれます。
この六つの質問を常に自分自身に対して実践することで、より成果のでる選択をすることができるようになると説いています。

個人的には「やりたいことではなくやらなければならないことをする」という考え方と「直観を信じる」という内容に我が意を得たり、というところでしょうか。
これは私自身が顧問先に対して常日頃から説き続けていることです。
私自身も、もう少し心身ともに引き締めていかなければなりませんな~。

トポロジカル宇宙 完全版 ポアンカレ予想解決への道


別に専攻していたわけでもないのですが、数学や天文、物理系の入門書を読むのは好きだったりします。
その中でも特に数学については抽象の世界を扱っているという点について、非常に特異なものであると思っています。
ところが数学の世界の研究が進むにつれ、色々なところで実世界とのつながりが明らかになってきました。
抽象を研究しているはずの数学が実は実際の世界で起こっていることを表す算式を作ることができる。
とてもすごいことのような気がします。


本書はトポロジーと呼ばれるものについて書かれている本です。
トポロジーとは空間に関する学問とでも理解すれば良いでしょうか。
学問的にある程度都合のよい空間を規定した上で、その空間をアレコレいじることにより性質を探っていくような学問です。
本来ならば非常に難しい算式が必要なのでしょうが、本書においては一切の算式を廃し、ビジュアルのみでトポロジーの、特に宇宙の形に関するお話を進めていきます。

トポロジーの世界では2006年、難攻不落と言われていたポアンカレ予想という問題が証明されるという出来事がありました。
この問題が解かれたことで、宇宙の形に関する話が先に進んだんだよ、ということも触れられています。


私も本書を読んで全てが理解できたわけではありません。
しかし、非常に想像力を使うことが求められました。
この想像力を使うという行為は、経営においても大変に重要な要素です。

仕事ばかりに頭を使うのではなく、何か違ったことに対しても頭を使うことは脳科学の見地からも正しい行為なのだとか。
皆様もぜひ抽象の世界で想像力を駆使してみて下さい。

2009年9月11日金曜日

Harvard Business Review 2009年10月号


特集は二つです。
・論語
・脳科学

ここ最近の同誌の中では一番楽しめたかもしれません。
論語というと現代の日本ではそれほどなじみのないものになりましたが、戦前の学校教育などにおいては基礎中の基礎として取り入れられていたものです。
その内容を一言で表すならば「あるべきリーダー論」とでもなりましょうか。
特に「徳」という考え方については、とかく「得」「利」といったものにとらわれがちな現代において、とても大切な考え方のように思われます。


後半の特集である脳科学も大変に興味深い内容です。
特に「何歳になっても脳を鍛えることはできる」という論文は、何かと年齢などを言い訳に自分が出来ないことを言い訳しようとしてしまう人々(無論、私も含めてですが)にとって大変に耳の痛いお話なのではないかと思います。
また、論文内において「遊びの重要性」について触れられていたのは我が意を得たり、というところでした。


どちらの特集も面白かったです。
ぜひご一読をば。

2009年9月9日水曜日

イヤな「仕事」もニッコリやれる陽明学


陽明学という学問に関するお話がまとめられている本です。
江戸~幕末期にかけて活躍した多くの志士達が学んでいた学問として、その名は少しだけ知られています。

この学問において「知行合一」という考え方があります。
この言葉について、多くの作家や学者が「言行一致のことだ」という説明をしています。
言っていることと行動は一致していなければならないよ、という意味合いですね。

ところが本書の著者は「そうではない」ということを力説しています。
「そもそも言葉と行動は合一のものである」という考え方こそが「知行合一」の意味だと述べているのです。
人間の中には「良知」と呼ばれるものが存在しており、その良知に従って発言をし、行動を起こしていることこそが重要だ、というような意味合いでしょうか。
(中々に難しいお話なので、簡単にはまとめられません)

哲学の勉強などをした方には、イデアなんてのが比較的近いのでしょうか。
ただし「正しいものが存在する世界が存在する」というのがイデアの発想法なら、「良知は人の中に存在する」と考えているわけですから、より一人ひとりの心がけで何とかなるのでは?という気がします。

他にも「日新(日々変わらないものなどない)」という言葉など、とかく閉塞感に陥りがちな現在のような世の中にあって心の中に留めておくだけでも毎日の生活が少し良い方向に向かうような言葉が紹介されている本です。
あまり難しいことを考えずに、なんとなく目を通してみるだけでも面白いかもしれません。

2009年8月18日火曜日

Harvard Business Review 2009年9月号


信頼というものに焦点を当てている号です。
人はそもそもが他人を信じやすいようにできているといった話や、チームワークに関する一般的な認識を覆す話などは小さな企業にとっても役に立つ内容かと思われます。

金融恐慌から端を発した経済危機の状況下において、実は一番得ることが難しくなったことの一つの信頼というものがあるのではないかと考えています。
それまであって当然だと思われていたものが容易くひっくり返る世の中にあって、一体何を信用して生きていけばよいのか、という思いを抱いた方は多いのではないでしょうか。


「商売は信用が命」という言葉は以前から言われています。
それは一朝一夕にできるものではなく、長い時間をかけて育むものであることは間違いありません。
しかし、信頼を築くことを意識しないまま単純に事業を継続していて信頼が得られるほど楽な時代でもないのではないでしょうか?

大切なことは経営を意識化することです。
何を目的としてどのように取り組んでいるのか、そしてそれはどのような評価を得ているのか。
このような日常的な研鑽を続けることが、信頼を得るためには必要なのだと思います。

2009年8月3日月曜日

経営の神は細部に宿る


多くの経営書において「大局観の重要性」や「戦略的(大きな目標)が重要であり、戦術的(具体的な行動論)はその次の問題」という視点が語られます。
木を見て森を見ず、にならないことの重要性を繰り返し指摘されているわけです。

しかし、本当に森ばかりを見ていて経営は上手くいくのでしょうか?
例えば植物の伝染病などは、まず一本の木が感染するところから始まります。
もし森全体の雰囲気ばかりに気を取られ、一本ずつの木を見ることを怠ってしまった場合、気がつけば森全体が伝染病にやられてしまうような事態になります。


戦略と戦術のどちらがより重要なのか、と問われれば私は「どちらも同じくらい重要」だと答えます。
大局観なき行動は成果が出ませんし、具体的な実行プランが存在しない夢は実現することが出来ません。
「木を見て森も見る」姿勢こそが重要です。
そして、今日から始められるのはより小さなこと、細かいことなのではないかと考えます。


本書は「小さなことにこだわる」ということの重要性を指摘しています。
小さなことにこだわるのは、問題の発見だけではありません。
事業の発展においても、小さなことにこだわるのは意味があります。
他社との差別化を図るに当たり、まず大切なのは「小さな差別化」を心がけることです。
そして次に大切なのは「小さな差別化を繰り返す」という継続的な姿勢です。

細かい人間はダメ、という意見がありますが一概にそうとは言い切れないよ、ということが分かります。
手軽に読める本ですので、是非ご一読を。