2010年6月15日火曜日

数学ガール



数学に関する読み物本です。
一人の少年と二人の少女の関係を通しつつ、数学に関する様々な問題に挑戦していきます。
より正確には「数学に関する問題を自分たちで考え、展開していきながら、その問題を解いていく」ということを繰り返していきます。


隠れた構造を読み解く楽しさや、数学の自由さを味わうことができる一冊です。
例えば我々が教科書で教わった色々な公式(今や記憶の彼方に去ってしまった数々の…)を自分で勝手にいじくりまわす、なんてことはしていなかったのではないかと思います。
本書では「好きにやれば良い」と色々な式を思い思いに展開していきます。


連作で出ているようなので、続きも読んでみようかと思います。

2010年6月12日土曜日

宮本武蔵は、なぜ強かったのか?



稀代の剣術家、兵法家として名高い宮本武蔵が遺した五輪の書。
その五輪の書の中にある「水之巻」に書かれている身体感覚に関する追求が中心となっている本です。

身体感覚に関するお話や物理学に関するお話など、人間の体が如何にシステマティックに構成されているのかがよくわかる一冊です。


また、本書の中で提言されている「分類しない、記号論にとらわれない稽古、練習」という考え方は、現代の我々には非常に重要なことを投げかけているのではないかと思います。
「ニュアンス」「曖昧」というと現代では否定的な意味合いで取られがちです。
極論でははっきりとしないものには価値がない、という考え方がスタンダードになりつつあるかと思います。

しかし、多くの実践、そして実戦において最終的に役立つのは「型や定義」ではなく「その場に応じて動く身体」の方なのではないかと。


学び方に対する一つの考え方を提示した本として捉えても面白い一冊ではないかと。

2010年6月6日日曜日

マンガで分かる心療内科



とある心療内科の病院のHP内で連載されているウェブ漫画が単行本にまとめられたものです。
ウェブ上では結構有名な作品かと。


中々聞きづらい心療内科のお話などが分かりやすく解説されています。


受験生時代に成果が出なかったときなど、相当に落ち込む日々が続いたこともありました。
また、子育てなどで本当に悩んで苦しんだ日もあります。
良くないこと=何でも病気、という安直な決め付けも良くないとは思いますが、因果関係がある程度分かっているものを精神論だけでひっくり返そうとするのも無理があるのではないかと思います。


個人的には、女性化願望のところなどが非常に興味深いです。
感情を表に出せる機会を用意することは、とても大切なことなのだと確認。

2010年6月5日土曜日

女の眼でみる民俗学



女性の執筆陣による、女性に関する民族的な問題を取り扱った本です。
炊事や洗濯、出産や死など、女性の一生にどのような出来事があったのか。


特にこと出産ということに関して、女性は明らかに男性よりも大きな負担を強いられているわけです。
そのことの「負担感」というものに対する不公平感のようなものは、やはり以前から根強くあったのかな、と本書を読んでいて思いました。

ただ、それでは女性が一方的に負担を強いられ、虐げられていたのかというとそういうわけでもなさそうです。
一部の風習に残る「男性だけに限定されるもの」(例えば相撲の土俵には女性が上がれないなど)の原因は、女性が劣っているとか不浄である、というよりも「女性のもつ特別な力」を恐れてのことだったのではないか、という指摘もなされています。


また、炊事などを女性が担当していることについても面白い指摘があります。
炊事を任される、ということはその一家の命運を一手に引き受けるに等しい意味合いをもっていたようです。
つまり「炊事を押し付けられる」という感覚よりも「炊事を信頼して任される」という解釈に近い。


現在の我々が持っている死生観とは明らかに異なる世界。
しかし、我々はそういった死生観を捨て去り、また新しい観を育て、受け継ぐこともなく現在の世を生きているわけで。


功利主義が幅をきかす現状にあって、実は大切なのはそういう「命の客観化」のようなものなのかもしれない、などと漠然と感じました。

2010年5月20日木曜日

日本辺境論



経営の世界における「日本のガラパゴス化」という定説が言われて久しい昨今。
敢えて「それで良いんじゃね?」という内容の本がこちら。


本の内容があまりにも多彩、悪く言うと雑多なので、読み辛い部分はあるように思います。
論理の展開も、飛躍している部分があるのでその傾向に拍車はかかっているかと。


しかし、それを考慮した上で面白いと思いました。
特に「武道における機」の考え方をここまでわかりやすく書いてある本は中々ないと思います。
「敵を作らない」という考え方が、心持ちの問題ではなく「身体技法の問題」と解説しているなど、武術書では中々読み解けないようなお話がわかりやすく書かれています。
(って、このわかりやすくしようとすること自体が本書の中でも触れられていますが)


評価が真っ二つな本は面白いですね。
以前、とある出版業界の方が「そういうのが良い本だと思います」とおっしゃっていたことを思い出しました。

2010年4月15日木曜日

養生訓



ホリスティック医学(全体的医学)の推進者である帯津良一さんが書かれた、養生訓に関する本です。


養生訓とは、江戸時代の儒学者貝原益軒が書いた長寿や健康に関する書籍です。
その内容は「自分の身体に内在する生命を如何に活用させていくか」というもので、その考え方はまさに現代のホリスティック医学と同様のものです。


その内容は、ごく簡単にいえば「普段の生活習慣でこんなことを気をつけよう」というものです。
また、貝原益軒の書いた養生訓は当然江戸時代に即したものなので、それを帯津良一さんが現代に適合するような補足を加えることで、より面白い内容となっています。


そこそこ楽しみ、そこそこ節制。
無理せずに自分の生命を活用していく。


「青雲の志」について、本書の中でも紹介されています。
この言葉は別に立身出世のための言葉ではなく、生命の活用に関する言葉なのではないかと。

私は職業会計人ですので、数字のことを無視するわけではありませんが、数字以外の面についてもお客様がより良い生活を送れるような仕事を心がけたいものだ、と思います。

身体論 スポーツ学的アプローチ



身体論に関する歴史的かつ多面的な分析を試みている一冊です。
舞踏と武道、その同根性や近代における身体概念など、とても面白く読めました。


他者肯定、祝祭的なものの存在、理性や合理とのバランスのことなど。

自分の身体は自分のもので、自分で全てコントロールできるものである、という発想が近代の身体技法に関するベースになっているかと思います。
そこからの脱却を図ることが必要なのではないか?という本書の提示に対して、私などは経営の世界からどのような回答を導き出すことができるのか?
非常に興味深いところです。


また、最後に触れられている「視覚中心から触覚中心への移行」というお話はとても興味深いです。
テクノロジーの世界における触覚の問題など、今後は「触る」ということが重要性を増してくるのではないかと考えています。


アマゾン以外のネット書店などでは購入することができるようです。
宜しければぜひ。