2010年9月20日月曜日

表現力のレッスン



この前に紹介している「発声と身体のレッスン」と色々な部分でつながりがあります。
「体」や「声」に対する教養を身につけていくための手法が紹介されている本です。

表現している内容ではなく、表現そのものが魅力的であるがゆえに成果が出てくる、ということはままありえることです。
また、普通は「感情から表現が産まれる」という理屈の方が語られますが、本書では「表現をすることで感情が産まれてくる」という方向の話が何度も出てきます。
例えば声を5つの要素に分割し、それぞれの要素をどう変えるとどんな感情が出てくるのか?ということを表現の技術側から捉えていくわけです。


演劇を目指す人に向けた本ではありますが、ただ、身体に関する意識を高めたいときにはとても良い本なのではないかと思います。

2010年9月11日土曜日

発声と身体のレッスン



鴻上尚史さんが書かれた「基本的には演劇を志している人向けの本」です。
とはいえ、本の中でも触れられていますが、人前に立つことが仕事になっている人にとっては、発声と身体に関してのレッスンを積むことはとても意義のあることだと思います。
よく「言っていることは良いのに説得力がない」という人がいますが、それなども「発声」やそれに対応するための「身体技術」を手に入れていれば、相当に改善することができます。
海外の政治家などが必ずヴォイストレーニングなどを受けているのも、そのような理由です。


本書は大きく分けて「発声」と「身体」に関する内容に分かれます。
そしてこの二つは不可分なものであり、「発声」に適した「身体」を手に入れるために必要な技術が関連性を持ちながら展開されていきます。


身体に関する技術については「外側」と「内側」に分けて考えられています。
ただし「外側」(具体的に格好良く魅せる方法など)については本当に簡単に触れているだけで、そのほとんどが「内側」に対するレッスンのために割かれています。
具体的には「リラックスした身体を手に入れるための方法」が具体的に説明されていきます。

内容としては野口体操やアレクサンダーテクニークなどの美味しい部分を色々とつまみながら勉強できる本かと。
専門的に勉強された方には物足りないかもしれませんが、それらを総合的にまとめているという点において中々に実用的な本なのではないかと思いました。

2010年9月7日火曜日

古武術介護入門



お客様に介護事業所を経営されている方がいらっしゃるのですが、そちらに置いてあったので何気なく手にとって読み始め、面白かったので自分でも買ってしまった一冊です。

古武術介護に関する6つの原理を紹介して、それを実践する具体的な技術について図解とDVDを使いながら説明をしていきます。
6つの原理とは

・揺らしとシンクロ
・構造
・重心移動
・バランスコントロール
・体幹内処理
・足裏の垂直離陸

この言葉だけでは中々分からないかもしれませんが、随所に散りばめられている「武術遊び」と呼ばれる身体を使ったテストを試してみることで、その意味が実感できるようになっています。


私自身、子供をだっこするときに「右腕」よりも「左腕」を使ったほうが疲れにくい、と感じていました。
これなどは6つの原理のうちの「構造」の話ともろに被っているように思われます。
右腕だと「腕の力」があるので腕だけで抱こうとするが、左腕の場合「腕の力」がないので身体全体を使わざるを得なくなり、結果的にそちらの方が楽になるわけです。


反動をつけず、ひねらず、溜めず、というのは日本の身体技法について書かれた本の多くで触れられている要素のように思われます。
そして、私の友人で西洋の発声について勉強をし続けている人がいますが、その人曰く現在の西洋における発声技術の最先端は正しくこの「予備動作のない動き」なのだとか。


これらの技術の多くは「部分ではなく全体を使うこと」で効率的な動きを目指しています。
「疲れやすい」とか「腰が痛い」といった症状にお悩みの方にもオススメの一冊です。

2010年8月30日月曜日

オトコの仮面消費



「女性が強い時代」と言われて久しいですが、一方で「男の存在感」は薄くなり続けているように思われています。
実際、企業のマーケティング等においても、如何に「女性を取り込めるか?」という視点から商品開発等が進められているようです。
特にこれまで男の専門分野だと思われていたような商品(車は家電製品など)においても、女性側が主導権を握るようなケースが増えているようです。


しかし、それでは本当に男は「お金を使わない」生き物なのか?
本書では「そうではない」ということを主張し、男の生態系について実例を挙げながら「男のお金の使いどころ」を探っていきます。

読んでいると「あ~そういうことあるよね…うんうん」というようなお話が続々と出てきます。

また、昨今の定説である「ニッチな部分を狙っていく」というマーケティングの常識に対して果敢に戦いを挑んでいる本でもあります。
「王道」において如何に商売をしていくのか。
それは企業の規模には関係がないのではないか?ということを考えさせられる本です。

2010年8月28日土曜日

メールの超プロが教えるGmail仕事術



今や検索エンジンとしてだけでなく、本当に多くのサービスを提供しているgoogle社。
日本ではyahooと手を組む、とのことで正にgoogle帝国、とも言えるような状況になっています。


そのgoogleが提供しているサービスの一つがGmailと呼ばれるウェブメールサービスです。
本書はそのサービスをどのように活用していくか、ということを説明している本です。

本書と面白さとして「こういう設定にするとこう使えますよ」というレベルで話を終わらせていないことでしょうか。
具体的には、Gmailを使った情報の総合管理のような方法に触れています。
主な使い方は、Gmailをストレージとして活用するようなイメージでしょうか。


クラウド、と呼ばれるものが言われ始めて少し経ちますが、これなどはそういった動きの分かりやすい例の一つなのかも知れません。

メール絡みで困っている人、情報の整理がどうも出来ていない人など。
そういう方には中々オススメの本です。

2010年8月24日火曜日

事実認定の手法に学ぶ荘司雅彦の法的仮説力養成講座



検察や弁護士、それに裁判官などの司法に関わる人々は「真実を明らかにしようとしている」と一般人は考えがちです。
しかし、実際はそうではなく「如何に説得力のあるストーリーを構築し、それを提示し、その妥当性を判断していくのか」というまるで小説家のようなお仕事をしているようです。

客観的な事実を集め、その中から確実性が高いものを選択し、そこから経験則や論理的な推認などを用いながらストーリーを構築していく手法は、非常に精密であることが求められます。
また、ストーリーを作るといっても「好き勝手に作って良い」ということではありませんし、また「相手から突っ込まれること」を前提にしながら自説を構築していかなければなりません。


本書では、そうやって緻密にストーリーを構築していく手法を経営などにおいて利用していくべきだ、という主張がなされています。
また、過去のストーリーを構築するための手法を現在から未来に向かって伸ばしていくことも有効なのではないか?と提起しています。


ストーリーの構築は、経営においても必要不可欠なものです。
そのとっかかりとして、このような「法的仮説力」を用いるのも有望な方法なのかもしれません。

2010年8月20日金曜日

数学ガール ゲーデルの不完全性定理



「数学ガール」シリーズの第三作です。
自分自身の無矛盾性を自ら証明することはできない、というゲーデルの不完全性定理に関する本です。

さて、この不完全性定理、どちらかというと「否定的な意味合い」で使われていることが多いようです。
「数学の限界」を証明してしまった悲劇の定理として扱われていることの方が多いように見受けられます。
そしてそこから拡張解釈をして「理性の限界」や「合理性の限界」に話を展開しているようなケースが多々あるようです。
私自身も、そのような意味合いでこの定理を捉えている部分があります。


と同時に、ここ最近ずっと考えている「安易な一般化」という話があります。
ゲーデルの不完全性定理は本当に「全ての合理や理性、ロジック」についてその限界を提示しているようなものなのか?
私にはその部分がよく分かっていませんでした。


本書を読み終えての感想は、やはり「安易な一般化」に対する一層大きな懸念です。
この本を読むと、ゲーデルの不完全性定理が「あくまで数学上の問題」であることや「理性や論理の限界」など対象にしていないことが分かります。


その内容の鮮烈さから非常に恣意的な利用をされているこの定理について、少し違った側面から触れてみることが出来る本です。